主要駅から消える百貨店……ターミナルの新たな覇者となるのは?
JRの商業施設が好調な理由は、百貨店ではないから!?
図表①は、ここ10年ほどの間に首都圏にできた大型ショッピングセンター(百貨店と店舗面積が遜色ない3万㎡以上)を抽出したものであるが、その多くが中心ターミナル立地ではなく、郊外(郊外駅前も含む)に開設されていることがわかるはずだ。
これらは1施設当たり概ね300~500百億円ほどの売上高があると言われており、この10年でも相当な需要が郊外地域に移転したことは想像に難くない。リストをみればわかるとおり、首都圏で百貨店の大衆需要を奪ったのは、イオン(千葉県)やセブン&アイ・ホールディングス(東京都)といった流通大手ではなく、「ららぽーと」を運営する三井不動産、アウトレットを展開する三菱地所であったということも、なんとなく合点がいくだろうか。
その点では、ターミナルを百貨店ではなく、専門店集積で装備したJR東日本の流通事業は今でも揺るぎない存在感を保っている。図表②はJR東日本の流通事業のうち、商業施設運営を業とする「ルミネ」「アトレ」の売上の推移をみたものだ。
コロナ禍の時期は大きく減収となっているが、基本的には増収トレンドであり、2023年度は過去実績を上回る可能性もある。JR東日本の強みは、乗降客数の多い駅の数が圧倒的に多いということである。さらに言えば、首都圏ではクルマ離れが進みつつあり、鉄道網への依存度はさらに高まると考えられる。JR東日本の大型商業施設が、今後も安定的な業績を期待できるだろう。
「ルミネ」「アトレ」は、新宿のような巨大ターミナルにもあれば、郊外の大きめの駅にも広く分散配置されているため、安定的な成長を維持できた。起点駅に集中投資せねばならない私鉄に比べ、圧倒的に恵まれた立地を生かしたJR東日本の商業施設運営が成功しているという評価になるだろう。
では、JR東日本は今後も盤石なのだろうか?
流通アナリスト・中井彰人の小売ニュース深読み の新着記事
-
2024/07/04
コロナが明けても安心できない外食大手の経営環境と深刻な課題 -
2024/05/02
イズミが西友の九州事業を買収、激動の九州小売マーケットを制するのは? -
2024/04/03
セブン-イレブンの7NOW全国展開へ!拡大するクイックコマースへの“懸念”とは -
2024/01/17
主要駅から消える百貨店……ターミナルの新たな覇者となるのは? -
2023/12/25
徹底考察! ドン・キホーテ新業態「ドミセ」出店の真のねらい -
2023/10/12
イオンGMS復活の命運を握る「そよら」、非食品復権のカギはあのホームセンター?
この連載の一覧はこちら [18記事]
関連記事ランキング
- 2024-06-19インバウンドで最高益続出!日本人が知らない「百貨店の価値」とは
- 2024-06-29人気アナリストが解説、主要小売7業態決算総括と24 年度の展望
- 2024-06-29ファストリ12 兆円越え!上場小売業時価総額&ROA ランキング2024
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2022-04-26コロナ、円安でもユニクロ過去最高益の秘密と、他のアパレルが絶対勝てない理由とは
- 2023-06-29多様化するギフト機会の中で、減少続く中元・歳暮の生きる道
- 2020-01-29潮目の英・老舗デパート「ジョン・ルイス」がイノベーションアワード最高賞 を獲った理由
- 2020-06-15そごう・西武、「西武東戸塚S.C.」を全館テナント型にリニューアル
- 2021-12-09「ギフト」特化で成功! 大丸松坂屋のEC戦略とは?
- 2022-10-10流通相関図から振り返る「食品スーパーの動向や異業種の参入について」