徹底考察! ドン・キホーテ新業態「ドミセ」出店の真のねらい

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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粗利益率比較で見えたドンキのビジネスモデル

 小売業は、一定規模より大きくなると、自社ブランドであるPBをつくり、その売上比率を上げていこうとするのが一般的である。その理由としては、PBはメーカー側の広告宣伝費がかからず、中間流通業者も介在しないため、同じ規格でもメーカー品(ナショナルブランド:NB)より低価格かつ高収益を実現できる。

 そうした理由から、大手小売などではPBを中心とした売場づくりを進めて、収益力向上をめざしている。そのため、NBを同機能の廉価版PBに置き換えることで、低価格と高収益をねらうという考え方が一般的なのだが、PPIHはそうした考え方とは一線を画している。「ドン・キホーテ」の店舗では基本的に、ありきたりの発想のPBは売場には並ばない。それは、同社が安さ以上に「売場のエンターテインメント性」を重視しているからである。

 ドンキは、ディスカウントストアと言われるだけあって、安さをウリにするビジネスモデルではあるものの、それ以上に店舗を時間消費のためのエンターテインメント空間として提供し、来店動機をつくってきたことはよく知られている。同社が「魔境」と称する売場空間は、宝探しをするようなワクワク・ドキドキ感を感じさせることが重要なのであり、乱暴に言ってしまえば、買物はその“ついで”にしてもらうものである。ドンキユーザーも、必ずしも安さだけを目的としていないことは、PPIHの粗利益率の構成をみればわかるかもしれない。

 図表はPPIHの国内ディスカウントストア事業における商品部門別の粗利益率を示したものだ。食品は購買頻度が高いため、19.4%とかなり利幅を薄くして安さを打ち出している一方で、そのほかの部門は相応の利幅を確保していることがわかる。ディスカウント販売を強みとする食品スーパーのオーケー(神奈川県)と食品強化型ドラッグストアのコスモス薬品(福岡県)の部門別粗利益率と比較してみると、ドンキが決して安さだけをウリにしているのではないことが見て取れるだろう。つまり、安さをアピールしつつも、ワクワクする売場を提供することで相応の利幅を確保するというのがドンキのビジネスモデルなのである。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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