“儲からない”我慢大会どこまで続く?5年後の商社のアパレルビジネスと業界への影響を大予測!
5年後も勝ち残るためにはどうすべきか?
商社は今こそビジネスモデル全体を変えるための投資を行うべきだ、と私は思う。再三指摘しているように、グローバルのアパレルでは500円、1000円というローエンドプライスがボトムを受け持ち、すでにそれらのいくつかは日本に上陸してきている。思い出してほしい。ユニクロが原宿に進出した1998年、私たちは「あの安もの屋が原宿に来るのが間違っている。ロードサイドに出すのが正しい」と高をくくり、「あんな下着屋と一緒にしないでくれ」と「ユニバレ」というネガティブキャンペーンをはり、真正面からの戦いを避けてきた。告白すれば、私もそうだったのだが、あまりにメディアが騒ぐので、同社の店を見に行ったとき、「その手があったか」と衝撃を受けた。店内に陳列された衣料品の数々は、ほとんどがベーシックでなんの変な模様やデザインプリントもない。
インナー(外出着)やTシャツならこれでいいじゃないか。
と誰もが思ったはずだ。しかし、こんな単純なことさえ真正面から受け入れようとしなかった私たちは、いつしか柳井正氏は経営の神様で、自分たちとは違う(から仕方がないんだ)と言い始めた。学者はこの不況産業の中で世界一をめざす、唯一の企業であるファーストリテイリングの分析をデタラメにやった結果、誰もファーストリテイリングから学ぶことができなかった。
今、コンサルや学者によるShein(シーイン)の講演が増えているという。私は、ユニクロの当時の状況を思い出さずにはいられない。前回話した「Temu」もそうだが、いずれお尻に火が付いて、はじめて慌てて走り出すことになるだろう。しかし、日本企業の多くが勝てる見込みは思いつかない。
非上場企業が進むべき道、上場企業が選ぶべき道とは
それでは、最後にコンサルらしくどうすべきかという提言をしたい。本当は、今から投資を行い、世界の潮流を学び5年後のビジネスモデルを描いて大改革の一歩を踏み出すべきだ、といいたいのだが、それができるのはごくわずかな企業だけだ。理由は冒頭の悲痛な叫びを聞けばわかる。
こうした中から私が提言するのは、あえて非上場の道を選び、プライベートエクイティなどファンドの力を借りて資金調達を行って、海外進出やビジネスモデル改革をすることだ。痛みを伴う改革は、自ら進んではできない。ならば、胃カメラと一緒で、医者に「えいや」と突っ込んでもらうのがもっともよい。そう。痛い治療は他人にやってもらうのが一番なのだ。ファンドが悪魔の手先だなどと今でも本気で信じている人は流石にいないだろう。私が見聞したところでは、むしろその逆で、なぜ、この場でもっと大胆な改革をしないのかと思うほど、現場に優しいのが実態だ。投資した金が溶けるのは、この改革のタイミングを「優しさ」で逃すからだ。
痛みを伴う構造改革は、時間が経てば経つほど痛みは増してくるのだが、痛いのは最初だけで、私の経験から言っても痛みを乗り越えた先には勝利の美酒が待っており、関係者はみな出世し、喜びで満面の笑みを描くのが一般的なのだ。
それでは、上場企業はどうすべきか。それは、慎重な取り扱いが必要になるため、単純なコメントは避けたい。一度、公開企業となる道を選んだのだから、ステークホルダーマネジメントは半端ではないだろう。その企業の置かれた状況や株主構成によっても戦略の打ち手の幅は全く変わってくる。また、金融で買収防止施策をとるなど、本来事業価値を上げて株価を上げるのがもっともよいのだが、今の日本企業は大バーゲン・セールで、海外の投資家が集まってきているというおかしな現象が起きている。円も安くなり、一昔前なら、これで経済が成長しないなら、やることはないというぐらい好条件がそろっているのだから。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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