食品衛生の老舗サラヤが冷凍機器を製造し、冷凍技術を使った総菜店を営む理由

2023/03/17 05:55
佐藤 良子
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注目の冷凍機器&冷凍食品とは?

 冷凍機器の中でも「サラヤの業界シェアは不明」(脇本氏)と前置きした上で、サラヤの「ラピッドフリーザー」は昨年の販売台数比300%増、2023年の売れ行きもすでに好調だという。

 顧客はほぼ飲食店。「昔は魚介類の加工業者など、一次産業や二次産業に携わる企業がほとんどでしたが、今は飲食店といった三次産業に携わる方が生き残りをかけて導入する例が増えた。また食品ロス削減推進法の施行でフードロスは今後、企業や店にとって命題。エシカル、SDGs、フードロス対策をきっかけに冷凍に着目する人が多い」と話す。

 現在の冷凍機器事情はというと、①マイナス30度のアルコール凍結液に真空パックした食品を浸して短時間で凍らせる液体式、②マイナス30度以下の気体を当てるエアブラスト方式、③マイナス35度の気体を全方位から当てる3D冷凍といった種類に分けられる。

 ①は一般的な冷凍庫の約20倍という凍結スピードの速さとランニングコストの安さが魅力。小型機もあり、小規模店でも取り入れやすい。一方で超大量生産は不向きだ。サラヤの「ラピッドフリーザー」などで知られる。

 ②は①よりも凍結に時間がかかるものの、大手SMに並ぶような大量産型冷凍食品の凍結に向く。

 ②と③は真空せずに凍結できるため、真空パックすると潰れてしまうようなホールケーキなど真空パックに向かない食品に向き、特に③は2110月に発売されたデイブレイク「アートロックフリーザー」がある。

 店や企業だけの業務用だけなく、冷凍技術の革新は家庭用でも起こっている。2211月には家庭用冷凍機も登場。氷点下でも凍らない液体パックの間に食品を挟んで凍らせる凍結スペースと冷凍スペースが一体型になった家電で、2台目の冷凍ストッカー需要を狙う。

大阪東部卸売市場の一角に、2020年8月に誕生した「コトフラボ」。素材の洗浄室10坪、調理室10坪、液体凍結と冷凍保管室10坪を3名のスタッフで回す
大阪東部卸売市場の一角に、2020年8月に誕生した「コトフラボ」。素材の洗浄室10坪、調理室10坪、液体凍結と冷凍保管室10坪を3名のスタッフで回す

 一方、今後の冷凍食品において注目したいのが「スイーツ」だと話す脇本氏。というのも、ラボでは「コトフ マルシェ」で販売する総菜作りに加え、他社のOEMも請け負っているが、その注文のほとんどがスイーツの製造だという。商品はチーズケーキを筆頭に、アップルパイやシフォンケーキ、タルトなどが多い。

 この背景に対し脇本氏は「昔は不味いというイメージがあった冷凍食品のイメージがなくなり、若い世代が冷凍食品を購入する機会が増えたからではないか」と分析。この他、同社と付き合いの深い冷凍食品の小売店ではたこ焼き、お好み焼き、キンパ、ピザが売れているといい、「今後の冷凍食品のキーワードは常食(常備する一品)とスイーツ」と話す。

  「冷凍技術を使い、多くの国産素材が世の中に出回れば、国内が活性する要因に。ネット上でも幅広い冷凍商品を提案するなど、まだまだ開発の余地がある。ネットとリアルで新しいビジネスを作り、それが単なる販売だけでなく生産地の支援や市場の活性になれば」(脇本氏)と話す。

  今後、「コトフ マルシェ」では、スムージーを販売したり、現在売れ筋の冷凍フルーツの種類を拡大したり、ニーズのある魚介類の煮物や干物を販売したいと話す。「ラボ」ではシェフが監修したコース料理のデリバリーや一般家庭向けのミールキットの販売などを考えているという。

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