SDGsは諸刃の剣 日本のアパレルに突きつけられた戦略的判断とは
日本のアパレルがSDGsに対応する唯一の秘策
つまり、リスクマネーが入ってこないということは、この先、私の目の黒いうちに業界再編が起こらず、紡績業界のように、静かにプレイヤーが日系から外資に変わってゆくという結論になるわけだ。世界の繊維輸出大国だった日本が、今では7兆円に落ち込んだ市場のわずか1.8%程度のシェアしかないこと、そして、50%だったシェアがここまでおちこんだ様を経験値としてしっている人はいないだろう。私は、それを加速させた張本人の一人で(商社の南下政策)、産業は静かになくなった。
そういえば、日本は似たような話ばかりだ。思い出してもらいたい。例えば、日本が非接触技術で世界の先陣を切ったにも関わらず、周回遅れの単なるバーコードで立ち向かったAppleに完敗といえるほど叩きのめされ、いまでは、ガラケーなどと呼ばれる非接触技術搭載の端末は消えてなくなった。半導体もそうだ。自ら人的コスト、社会コストがかかる産業を潰しておきながら、次の産業も育てないまま、せいぜいアニメとAKB48、環境立国ぐらいしかなくなってしまったわけだ。経済をしらない政治家が、生産拠点をもとに戻せとどなっているが、すでにドル円相場は130円程度に回復している。私は、為替などそんなもので、実際日本の輸入と輸出は85兆円で均衡しており、誰かが損をしたら、それと同じぐらい誰かが儲けているし、固定相場制ではないのだから10年というスパンをみれば、歴史が証明しているように円安と円高が交互に繰り返されているのだと書いている。私が「知らなきゃいけないアパレルの話」で書き綴ったように、「産業崩壊の過程」について、事実をベースに金と情報の流れを理解してもらいたい。
日本のアパレルはSDGsにどう対応すべきか?
それでは、日本のアパレル産業はSDGsについてどのように対応すべきか?私が、後生大事に温めておいた、日本と中国を横断する「ビジネスプロセスプロトコル統一政策」をご披露しよう。この産業政策は今でも有効で、実際、米国でDAMA projectとして紹介された。SCMの最終形をCPFR (シーファー:サプライチェーンが完全同期し、相互に計画を練り、相互に予測を立てる全体最適、という概念。Collaborative planning, forecasting and replenishment)といい、私は、これを日本主導でコード統一委員会の管理下でつくりあげ、中国と日本の貿易の架け橋とし、デジタル化を実現するという案で、政府にはイニシアティブをとり、今の人権デューディリジェンスのようにアジアのリーダーシップをとるという提案だ。
この産業政策は、ちょうど8年前に経済産業省に提出され採択された、私にとってはじめての産業戦略論ともいえるもので、丁度、安倍総理の三本目の矢にあたった。日本主導で、コード、プロセス、決裁、アウトソーシングなどのすべての企業間のやりとりが標準化されれば、その破壊力は凄まじい。米国のDAMAの文献はウエブ上から消えてしまったが、たしか数兆円という経済効果を一刻にもたらした。世界に先駆けて、「東アジアから東南アジアにかけての共存共栄の一大経済圏」をつくり、これをデジタル・パッケージにすれば、今、我々が外資のパッケージを使わされている逆の発想で、海外のアパレルに日本基準を遵守させることもできる。日本のコード委員会が、富士通、NEC、NTTなどに事前に方針をおしえておけば、海外のパッケージベンダーはおいつくことも不可能だ。
このように、日本基準のビジネスプロセスプロトコルを統一化できれば、H&Mが簡単に約束を破るようなHigg index などをおしのけ、アジアのリーダーになり、デジタル、PLM、物流のすべてを牛耳ることが可能になるわけだ。
このビジネスプロセスプロトコルを遵守した企業に対しては、暫定八条(いわゆる暫八)、最恵国待遇(途上国の資材や原料をつかって繊維製品を組み立てれば輸入税が免除される)といった、輸入税を5%免除するのである。
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