ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情
M&Aできない企業が淘汰される事情
ちなみに、このように神の領域にしか見えないマーケティングでも、パソコンを自在に操る「人」がいなければ、新しいクラスターは見えない。
したがって、類い希なる「マーケティングセンス」を持ち、同時にコンピュータを自由に動かせるデータサイエンティストと呼ばれる人間が必要となるのだ。
ひとえにデータサイエンティストといっても、日本ではAIを活用して、教科書通りの分析をする人間は沢山いる。
だが、そのような人はデータサイエンティストとしては失格だ。
データサイエンティストには、町をじっくり観察すれば、世の中のわずかな変化に気づき、「ひょっとしたら世の中はこうなっているのではないか」と、いう初期的仮説(分析力)を持つことが重要なのだ。その仮説を、ビッグデータを使い、ターゲットの新しい購買特性をデータから証明するのである。
残念ながら、そもそも日本のアパレルにはデータといえるレベルのものがないため、現時点ではデータの整理整頓を必死にやっている段階だ。こうした状況を情報システムに「なんとかしろ」と押しつけ、また、ビッグデータアナリシスとは何かを理解せず、「我が社は100万人の顧客データをもっています」といっている経営者をみれば、この企業のデータマネジメントのレベルがわかるというものだ。
こうした段階から一気にデータを整理し、腕の立つデータアナリストを捕まえる方法は何だろうか?
それは、弱り切った通販会社を買収し、アクティブ顧客(まだデータとして活用できる)を入手するということである。
日本企業は、こうした企業買収を使った自らの「七変化」をわかっていない。資本主義では、経営が弱り切った場合、株価は落ち資金は枯渇する。つまり、新たな資金の出し手(投資家)が必要となるわけだ。
ところが、自ら金の卵である顧客データをもっているにも関わらず、「金がない」の一点張りで投資もできない会社がほとんどだ。
だからこそ、企業内に腕の立つM&Aコンサルを参謀として雇う、あるいは、そのような人材を外部から採用して、そうした「金の卵を持つも、投資のできない会社」を選別し、買収するのである。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
河合拓のアパレル改造論2022 の新着記事
-
2023/01/24
「大ディスカウント時代が到来」 この意味が分からないアパレルの未来は悲観的な理由 -
2023/01/17
H&MやZARA等が原価下回る価格で取引を強要 SDGs時代にこんなことが起こる必然の理由 -
2023/01/10
ビッグデータを制する企業が勝利する理由と、M&Aできない企業が淘汰される事情 -
2022/12/27
2023年のアパレル大予測 外資による買収加速・DX失敗・中国企業に完敗、が起こる理由 -
2022/12/20
中国企業傘下の仏メゾン「ランバン」米国で上場 いまや中国企業に追いつけない理由 -
2022/12/13
過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは
この連載の一覧はこちら [55記事]
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販