ローカルチェーン必見! スーパーマーケットが人口減少エリアで勝ち残るための条件とは

鈴木 武夫 (株式会社 日本コンサルタントグループ パートナーコンサルタント)
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地域No.1チェーンの存在

 ご存知のように、日本の国土の70%は山地で、各都府県の県境は高い山々、あるいは大きな河川によって区切られています。小売業が「地場産業」と言われる由縁でもあります。

 みなさんが生まれた地や生活する地、あるいは店舗展開するエリアを思い返してみて下さい。各都道府県には、それぞれ有力スーパーといわれるチェーンが存在しているかと思います。「地域シェアNo.1」と言われるスーパーマーケットチェーンは、少なくても約20%のシェアを握っているとされます。滋賀県で圧倒的なシェアを握る平和堂のシェア率は40%を大きく上回るとも言われています

 北海道の例にして考えてみましょう。北海道の人口は約522 万人。北海道では、アークス(北海道)、イオン(千葉県)、コープさっぽろ(北海道)がそれぞれ約3000億円の売上規模があるとされ、次いでセブン&アイ・ホールディングス(東京都)で約1000 億円、4グループ合計で約1 兆円の売上規模があると言われています。

 この上位4グループの売上シェアは約80%とされ、残りの約20%を地場のチェーンで分けあっているのが北海道マーケットの現在の姿です。寡占化が大きく進んでいるというのも北海道エリアの特徴です。

 津軽海峡を挟んだ対岸の東北地方では、各県のNo.1企業が大きなシェアを握っています。

 青森県のシェアNo.1はアークスグループのユニバースで、2021年度(以下、同)の売上高は1313億円。筆者が独自に算出した県内シェアは約31%です。岩手県は同じくアークスグループのベルジョイスで最新の通期売上高は803億円と県内シェア約28%を握ります。秋田県は伊徳で、売上高は576億円。県内シェアは約21%です。山形県はヤマザワで売上高883億円、県内シェアは26%となっています。宮城県と福島県は少々異なり、リージョナルチェーンのヨークベニマル(合計売上高4694億円)がトップシェアを握っています。

 ※東北エリアの広範囲で店舗展開するイオン東北の業績(売上高約2100億円)は考慮していない

地域で勝ち残るには……

 各社とも多少の県境を越えての出店はあるものの、地域No.1チェーンは基本的に地元の県で店舗を展開しており(宮城県、北関東でもドミナントを形成するヨークベニマルは除く)、そのシェアは20~40%ほどであることが多いです。

 これを自社の事業エリア、県、地方に置き換えてみてください。だいたい当てはまっているのではないでしょうか。

 では、このような環境下では、どのような戦略を取れば競争で勝ち残ることができるのでしょうか。そのためにまず必要なのは自社のポジションを正しく把握することです。2番手なのか、3番手か、それとももっと下位なのか。自社の規模によって戦い方も異なります。「自社が何をしたいのか」「地域をどのようにしていきたいのか」という“ビジョン”も重要です。

 本連載では、いわゆる中堅以下のスーパーマーケット企業を売上規模で分けて、それぞれの戦略について考察していきたいと思います。①売上規模1000億円前後、②500億円前後、③100億円前後あるいはそれ以下、のチェーンについて次回以降、戦略を解説していきます。

記事執筆者

鈴木 武夫 / 株式会社 日本コンサルタントグループ パートナーコンサルタント

埼玉県出身。大手食品スーパーから中小スーパーを経験し、商品部の業務改善・利益改善に従事。小売業での経験を生かし食品スーパー、食品メーカー、流通機器メーカーへの商品政策、販売政策、店舗レイアウト、棚割、陳列、演出、数値分析などのコンサルティングも手がける。モットーは「実行なくして実効なし」、スピード感のある仕事をすること。

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