関西スーパー、H2Oとの統合案可決で決着 オーケーと関西スーパーを待つ、意外な“これから”とは

阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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オーケーと関西スーパー、どちらが正しいのか?

二宮涼太郎社長
株主総会後、記者に取り囲まれ、質問に答えるオーケーの二宮涼太郎社長

 改めて、今回の件について、関西スーパー、オーケーの考え方を筆者が代弁するかたちでまとめたい。

 まず前提となるのは、経営者の仕事は、株主価値を最大化することにあるという点だ。この株主価値の最大化とは、将来にわたって株主が稼得されるキャッシュフローを(時間価値を加味した上で)最大化するという意味である。

 オーケーは株主として、現在の関西スーパーが採る戦略はベストではないと判断した。関西スーパーに、首都圏で圧倒的な強さを発揮するオーケーの勝ちパターン「高品質EDLP」を実現する店舗オペレーション、マーチャンダイジングを導入することで、飛躍的な売上・利益の成長が実現できると踏んでいるわけである。だからこそ、それを前提に完全子会社化に際して、既存株主に1株あたり2250円という高値で買い取ることを提案した。自分たちは、企業価値をそこまで高められるという絶大な自信があるのである。

 一方で関西スーパー側も、4期連続で増収増益を達成してきたという実績に裏打ちされた自負がある。その核は、7つの要素を取り入れた店舗改装により、平均して5年間で売上が3割も上がるという成功パターンの導入だ。これに生産性向上とを組み合わせることで、業績をさらにドライブできること、そして経営統合するH2Oのリソースを活用してさらなる成長と関西エリアドミナンスを実現することが、株主利益に資すると考えているわけだ。

注意したいのは、漸増的改善と急進的改革の差

 どちらが正しいということではなく、両者とも「それぞれの正義」のもと、戦略を実行しようとしているのである。

 ただし、両者の戦略の効果とスピード感を考えると、漸増的改善(incremental improvement)である関西スーパー案と急進的改革(radical Innovation)であるオーケー案という大きな違いがある。多くの日本企業は漸増的改善が得意で向いているのは事実だが、急進的改革が成功すれば、企業の強さと収益性は階段を数段飛ばしたが如く一気に飛躍する。どちらを選ぶべきかはその時々の企業を取り巻く環境と成長フェーズによるためどちらが正解かは言えない。だが、競合からしてみれば、マーケット環境が激変する「オーケー化」の方がより恐るべき事態であっただろう。

 いずれにせよ株主は最終的に「関西フードマーケット」誕生を支持した。関西スーパー並びにH2Oは、統合の目的で説明したようなシナジーを創出し売上・利益を改善させて株主の期待に応えるだけだ。一方オーケーは単独での関西進出含め、新たな戦略を打ち出してくれれば、関西マーケットはさらに活性化する。願わくは数年後、関西スーパーもオーケーも関西のお客も全員ハッピーになったという、意外な「三方よし」を見てみたい。

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記事執筆者

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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