1年で1兆円企業に、ECでZARAを圧倒する中国 Shein(シーイン)の秘密に迫る
輸出入関税・原材料費ゼロのサプライチェーンの秘密!
まず1と2は、データ活用による世界中の「流行分析」とマーケティングだ。我々が普段使っているレベルを遙かに超える、いわゆるウルトラ・ビッグデータといっても良い巨大データ分析と活用だ。Sheinは、デザイナーの思う感じるを廃し、企画やデザインを徹底したビッグデータ分析で行っている。
世界中の国のエリア傾向、そして、一(いち)消費者の購買動向までを分析し、巧みなSNSによるウエブ誘導と、生産サイドである工場の出荷状況から得られる得られるビッグデータと掛け合わせ、「流行の服」を恐ろしいほどの短期間で開発しているのである。これも、私が3年前から提唱しているデジタルマーチャンダイジングのコンセプトと同じだ。
もともとデジタルマーケ会社から発展した企業。こんな芸当は朝飯前なのだろう。
3と4については、筆者独自のルートで中国広州の取材により得られた二次情報である。
アパレル業界にいる人なら理解できるだろうが、中国の工場には日本、世界のアパレルが残した残反や糸などの「簿価ゼロ在庫」が山のように残っている。この残反は、日本を例にしていえば、繰り返しなされる無駄なサンプリングによる調達ミニマムロットと現物素材の「量差」である。工場は通常、R&D費用に乗せて薄めるが、フェアな工場の場合はFOB (アパレル企業が調達する仕入単価)に乗せている。
知らぬはアパレルだけで、自らがQR (Quick resuponseだ)を行っていると信じているが、実は、小口生産や分割生産は極めて非効率で、このような反物が山のように残り、アパレル原価を押し上げているのだ。例えば糸の原糸のミニマムロットは5トン 5000kgs。イタリアから染め糸を買っても15kgs (服は一着300グラム)は必要だ。
こうした現実を知らず、「SDGsは大量生産が原因だ」などと書いている評論家が後を絶たないが、私から言わせれば業務を知らないにもほどがある。小口生産や分割生産こそが、世界で不要な在庫を増大させて中国に山のように残反を残しているのである。商社の人なら倉庫に山のように積み上がった簿価ゼロ反物を何度も見た経験があるだろう。Sheinは、その素材を使っているようだ。つまり、世界のアパレルがSheinのために素材コストを立て替えていることになる。
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