業務プロセス改革に手応え、企業規模に合わせて仕組みを変える!しまむら 野中 正人 社長

聞き手:下田 健司
構成:田中 浩介
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テクノロジーで効率化

──新商品投入を月単位から週単位に変えたことにともない、売場づくりも見直したのですか。

野中 店舗数が増加するにつれて、バイヤーも在庫を管理するコントローラーも本社での業務が増え、売場を見る時間を確保できなくなっていました。そのため店舗では大量の在庫を抱え、売場に古い商品が並んでいました。見映えのしない、旬の感じられない売場になっていたのです。

 そこで週単位の販売計画の実施に合わせ、売場づくりについてあらためて社内で議論しました。その結果、女性のお客さまに買物を楽しんでもらえるような売場をめざそうという結論に至りました。

売場ではアイテム数を絞り、コーディネートを提案するスペースを広げた
売場ではアイテム数を絞り、コーディネートを提案するスペースを広げた。季節感を与えるアウターを充実させている
実用衣料は売場を縮小するとともにアイテム数を絞りこんだ
実用衣料は売場を縮小するとともにアイテム数を絞りこんだ。品切れすることのないよう、1アイテム当たりの在庫を増やしている

 女性向けでいちばん伸びしろがあると期待しているのがアウターです。17年2月期から新しい売場への改装を進めており、アウターを売場中央に広くレイアウトして、着こなしやコーディネートの提案に力を入れています。毎週、季節感あふれる新商品を投入し、高速回転させることで、いつ来店されてもお客さまを飽きさせない、楽しい売場にしています。

 一方で、肌着や靴下などの実用衣料の売場を縮小し、アイテム数を約3割減らしました。しかし、実用衣料は目的買いをするお客さまが多いので、1アイテム当たりの在庫量を増やして、欠品させないようにしています。

 このほか、売場の目新しさをよりいっそう打ち出すため、これまでよりも低い什器を導入して、売場全体を視認しやすくしました。17年2月期は主力の「しまむら」業態の約半数の店舗を改装しました。今期中に全店舗を改装する計画です。

 これまで、老朽化した設備を刷新するため、10年ごとにリニューアルしてきました。今後は、設備とは別に3年ごとに売場のリニューアルを行う考えです。

──そのほか売場をサポートするために、どのような改革を進められているのですか。

野中 業務内容を一つひとつ見直し、これまで人が行っていた仕事でも、テクノロジーに置き換えられるものは置き換えるようにしています。

 先ほど、全店に同じ数量の商品を納品すると説明しましたが、当然ながら立地や商圏による売上の多寡によって店舗ごとの在庫量には差がでます。そこで、在庫の多い店舗から少ない店舗に商品を移送する指示を自動化し、適切な在庫に調整できる自動移送システムを開発しました。バイヤーが投入枚数を調整して入力するよりも、納品してから自動で調整したほうがはるかに効率的です。

 また、売れ行きに応じて自動的に値下げするシステムも導入しました。商品の消化率や販売期間など一定の条件を設定し、在庫が設定した基準に達したら自動で値下げの指示を出せるようにしています。ただ、値下げは利益に大きくかかわってくるので、最終的にはコントローラーが判断するようにしています。

 このようにIT化を含めた業務プロセス改革を進めて、本部と店舗の業務量や作業量を減らすことができれば、本部は先々の計画を早めに進められます。店舗は作業量の平準化が図られることで、チェーンストアの店舗運営に徹することができるようになります。

 一連の業務プロセス改革を通じて、従業員の意識が変化していることを実感しています。これまで「そうは言っても……」が口癖だった社員が「今度はこうしてみよう」に変わりつつあるのです。「変革」を掲げて3期目となる今期は、社員が自発的に仕組みを変えてくれることに期待しています。

国内市場は今がチャンス、大都市部への出店を強化

──今後の出店戦略を教えてください。

野中 17年2月期末に国内だけで2000店舗を超えました。チェーンストアの成長エンジンは店舗数を増やすことですから、3000店舗まではわき目もふらず、とにかく店舗数を増やしていく考えです。

 国内の「しまむら」業態は1365店舗となりましたが、まだまだ出店の余地はあり、2000店舗は可能でしょう。とくに東京や大阪など人口の集中する大都市部への出店を増やす方針です。東京であれば山手線内や東急線、京王線などの沿線に店舗を出したいと考えています。しかし「しまむら」の標準的な売場面積の1000㎡前後にこだわっていると出店は難しいので、500㎡前後の小型店の開発に再度取り組もうと考えています。

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