間違いだらけのサステナブル経営 アパレル業界は「成長を望まない社会」の生活提案をすべきだ

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

循環型経済で、人の暮らしと衣服はどう変わるか?

kohei_hara /istock
kohei_hara /istock

 サステナブルは、マーケティング的な観点から語るのでなく、経済活動の行き着く終着点と捉えるべきだ。今まで人類が経験したことがない社会へ突入してきたということなのである。

 循環型経済のなかで人の生活は大きく変わる。ビフォーコロナの世界が、1対9が自宅と職場だとすれば、3対3対3ぐらいで、自宅、職場、社会活動のようなバランスになるだろう。そうなると、当然、スーツは売れなくなり、健康維持のためのスポーツ、自宅、仕事着がシームレスになる。だから今、スーツにスニーカーを履き、ネクタイなど締めずニットやモックネックにジャケットというスタイルが流行る。

 ついでにいえば、ジャケットとカーデガンの境目はなくなり、今売れているものはジャージ素材のジャケットやポリエステル混(弱いストレッチでしわがつかない)ばかりだ。そこには、クラシコと呼ばれるテーラードはない。

 また、ユニクロが売れるのは、ベーシックで着回しがよく、自宅でも職場でも、着こなしによって着回せること、加えて、何年も持つ強さがあるからだ。おしゃれを楽しみたい人は、できるだけ安い価格で寿命の短いファッションを楽しむのは必然なのだ。だから、百貨店のようなチャネルで高価格商品を“ファッションで売る”などのビジネスに全く未来はない。ならば、ルイ・ヴィトンのように、高くとも何年でも使え、その気になればブランド買取センターにもってゆけば高値で売れるものしか高額商品は消費者は買わないだろう。

 このように、オン(仕事)、オフ(自宅)、オフ(外出)がシームレスになった。私も組織から出て行き、5社と契約し生計を立てており、一つの組織に属さない自由の元、ワークライフバランスを保っている。私は、基本的に仕事はほとんど自宅でやっているし、移動はすべてクルマだ。ミーティングは可能な限りZoomやTEAMSをつかっていて、本当に大事なときしかフェイス・トゥ・フェイスの話し合いはしない。こうした仕事の仕方をする人は実際増えているし、今後も増え、定着するだろう。

 

早くも3刷決定河合拓氏の新刊
「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!

アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。

1 2 3 4 5

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態