ベンダーとアパレル双方が勘違い アパレル業界で需要予測が機能しないこれだけの理由と解決策

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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アパレルの需要予測が難しい決定的で構造的な理由

 私が、効果はないと断じる決定的な理由は、ネット拡大による、消費者のモール上での類似商品同列比較による「競争相手の存在」と、売上至上主義からくる「類似品の氾濫」である。

 今、消費者は、衣料品を買うときスマホやネットで、「色」や「デザイン」などを、モール内部で競合品比較し最もコスパの良い商品を選ぶ。特に、日本の「ブランド」と称する「分類名」は、同一チャネル内の競争でいうなら、ほとんど差異化は存在しない。さすがに、百貨店とショッピングセンター、スーパーぐらいに違いはあろうが、日本のアパレル市場の大半を占める女子達は、よほどのハイブランドでない限り、特定のブランドに強いブランドロイヤルティはほとんど感じておらず、多くのケースにおいて、同一チャネルで展開している、同一価格帯のブランド間で、最もコスパの良い商品を比較し購買していることは幾度も述べたはずだ。

 したがって、やがて、AI によるマーチャンダイジングの五適予測をアイテムごとに行う時代がきたとしても、より安価な競合品が似た商品を出せば、消費者は一気にそちらに流れることになる。つまり、本当に精度の高いアパレルビジネスのデジタル需要予測の開発に成功したとしても、論理的に、競合を含めた、市場にあるほぼ全ての商品を対象に実需差分析をせねば、精度の高い商品計画は立てられないのである。これは、技術の問題でなく構造の問題である。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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