#14コロナ禍で過去最高益達成!流通を川上からコントロールする北海道のチェーンストアの強さ

浜中淳(北海道新聞)
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コープさっぽろが道内初、小売主導の物流改革

 これまで何度か取り上げてきたように、60年代の北海道の小売業は無力であり、本州のメーカーの言い分通りに輸送費や寒冷地対策費などのコストが価格に上乗せされ、割高な「北海道価格」が形成されていました。

 しかし21世紀に入り、スーパーマーケット市場でイオン北海道、アークス、コープさっぽろの「3極寡占化」が進むなどチェーンストアがパワーをつけた結果、小売業が川中卸業者の経営に影響を及ぼす例も相次いでいます。

 私の知る限りで、北海道の小売業が中間流通の割高なコストに切り込んで成果を上げた最初の事例が、02年にコープさっぽろが手がけた酒類の物流改革でした。

 ビールなどの酒類は重い割に単価が低いため、運送業者が運びたがらない商品の代表でした。このため、卸業者が物流部門も抱え込んで、店舗に直納し、諸々のコストを納入価格に上乗せするのが長い間の商慣行になっていたのです。

 酒類卸が店舗に商品を直納するやり方は、専門卸ならではの情報を駆使し、店ごとの品ぞろえや棚割りなどにきめ細かく対応できるというメリットがあります。半面、納入価格には情報料や配送料などの名目のコストが含まれ、半ば「ブラックボックス化」していました。

 この構造を変えるため、コープさっぽろは札幌市内に自前のリカーセンターを新設。酒類卸に対しては店舗直納方式から、センターへの一括納品方式への変更を求めました。その上でセンターから店舗への配送については、あらためて卸や物流会社など数社を対象にしたコンペを行い、最も安い配送費を提示したキリン物流(現キリングループロジスティクス)に委ねたのです。

 酒類卸が抱えていた商流と物流を切り分けて、物流コストを明確化。さらに店舗への配送をケース物流に絞り、店頭でもケース売りを主軸にして、コストを抑えた結果、コープさっぽろのビールの価格は、道内で最も安い水準にまで低下しました。

 こうして「小売り主導の物流改革」が可能になったのは、コープさっぽろの年間供給高が当時、2000億円規模にまで成長し、酒の小売シェアでも北海道トップに立ったからにほかなりません。

3極寡占化が卸の再編を誘導

イトーヨーカ堂の道内売上高は、3極体制を形成するイオン北海道、アークス、コープさっぽろから大きく引き離されている。セブン&アイ・ホールディングスと提携関係にある三井物産も道内の食品卸事業では今ひとつ存在感を示せていない(写真は札幌市西区のイトーヨーカドー琴似店)
イトーヨーカ堂の道内売上高は、3極体制を形成するイオン北海道、アークス、コープさっぽろから大きく引き離されている。セブン&アイ・ホールディングスと提携関係にある三井物産も道内の食品卸事業では今ひとつ存在感を示せていない(写真は札幌市西区のイトーヨーカドー琴似店)

「スーパーが3極に集約された以上、卸業者もまた各カテゴリーで3番手以内に入れなければ、存在意義はないに等しい」(道内小売業幹部)-。07年に三井物産が北海道の食品卸事業からの実質撤退を決めたのは、その象徴的事例の一つでした。

 同年10月、子会社の酒類卸・北酒連(札幌市)を国分に売却、同時に三井食品北海道支社の道内取引のうち、業務提携先のセブン&アイ・ホールディングスとの取引を除いて国分に譲渡しました。要するに北海道では「セブン&アイ専門卸」に徹することを選んだのです。

 当時、イオングループとアークスが菱食(現三菱食品)、コープさっぽろが日本アクセスをメーン卸とし、国分や加藤産業など他の有力卸も一定規模の帳合を確保する中で、三井食品は3大グループの取引に食い込むことができなかった。国分への事業売却を発表した当時の三井物産の役員が「北海道市場は大変厳しく、独自に事業を発展させるのは難しかった」と肩を落としていたことを覚えています。

 スーパーは3極、コンビニはセコマが主役を務める北海道市場では、天下のセブン&アイといえども、脇役の域を出ず、「専門卸」の三井食品の存在感が薄らぐのも致し方ないのかもしれません。

 一方、イオンと三菱商事の提携が突然解消されたのをきっかけに、イオン北海道のメーン卸が三菱食品から国分に移るのではないかとも言われています。スーパーの3極体制に呼応する形で、道内の食品卸も国分、三菱食品、日本アクセスの3極体制に収斂していくのかが注目されています。

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