#10 180万世帯が平均4万円を出資してまで利用するコープさっぽろの戦略性
「運動」と「事業」のバランスが生協の生命線
生協は、現在のコープさっぽろのように「運動」と「事業」のバランスがよいと、組織がうまく回っていきますが、過去にはこのバランスを見失って経営危機に陥る例が散見されました。
当のコープさっぽろも創立直後の60年代後半には「事業」をすべてに優先させてチェーンストア化に邁進。一気に北海道トップの食品小売業者へと成長したものの、他人資本頼みで店舗を増やし続けた結果、資金ショートを起こして71年に経営危機に見舞われました(当連載の2回目と3回目参照)。
その反動から70年代のコープさっぽろは組合員組織を整備し、当時まだ社会参加の機会の少なかった主婦らによる「運動」(食の安全についての学習や、大手メーカー製品の値上げ反対運動など)の砦として、高い評価を得るようになります。ところが今度は「組合員のため」という大義名分を振りかざし、放漫経営が常態化していきました。やみくもに店を大型化し、重衣料、家電、住関連製品など「専門外」の商品に手を広げた結果、生協の生命線である食品売場までが劣化し、96年に再び資金難に陥ってしまうのです。
資金不足は100億円規模。組合員をつなぎ止めるため、負債を関連会社に押し付けて黒字決算をつくり、出資配当を出すといった決算操作まで行われていました。一般企業ならば銀行から見放され、倒産を免れない経営状態です。そんな瀕死のコープさっぽろの救済に動いたのが、生協の全国組織、日本生活協同組合連合会(日本生協連)でした。資金と人材を惜しみなく投入し、コープさっぽろが今日の姿に生まれ変わる土台をつくったのです。自滅同然で経営難に陥ったコープさっぽろに対し、日本生協連はなぜ「超法規的」とも言うべき救済に乗り出したのか。次回はその背景を探ります。
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