第73回リアル店舗の役割変化!ショッピングセンターが受け止めるべき現実とは
モノを届ける仕組みを奪われたSCの
次なる役割
しかし、小売には、店舗が介在する以外に訪問販売や通信販売などの無店舗販売が古くからある。テレビショッピングなどメディアが媒介するかたちで成長し、現在はネットを使ってモノを届けるEコマースが大きく伸長、SNSを使った消費者同士の売買もネット技術を使って容易に行えるようになっている。
この変遷は、それまでSCの最も大きな機能だった「モノを消費者に渡す場所」としての役割が大きく低下したことを意味している。
その一方でSCやリアル店舗には、BOPIS(ネットで注文、店舗受け取り)のように販売では無く受け渡し場所としての機能や、D2C企業がショールームや採寸をする場としての役割が増加している。
要は、販売する場としては需要が減少しつつも、商品を受け渡す機能やネット販売の補完としての機能は付加されているわけだ。
リアル店舗を主戦場としていた人にとって、「ECはリアルの補完」と思っていたものが、「リアルがネットの補完」と言われるのは釈然としないと思うが、これも現実である。
そして、SCの賃料形態が売上連動制である限り、リアル店舗の役割が販売から離れていくことは、受け入れがたい現実であるとも思う。
この連載で何回も指摘したが、ビジネスは定義に縛られた途端、衰退に向かう。その定義は自らが作り出し自らを縛る。この不思議なジレンマを払拭しない限り、SCの役割は低下し、生活者の足は遠のく。売上コンシャスで続けていくことはどう考えても無理があることは既に気が付いている。受け入れがたい現実だと思うが、都市化とモータリゼーションが進みネットが無い時代に作られたSCの機能と役割を見直し、仕組みそのものを捨てる覚悟を持つ時期ではないだろうか。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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