百貨店跡地再生に強みのヨドバシカメラ 図表でわかるビックカメラとの都心争奪戦の行方

中井 彰人 (株式会社nakaja labnakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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ヨドバシにとっては千載一遇の好機?

 このようにヨドバシカメラにとって、今回のそごう・西武の案件への連携は、主要都市マーケットにおけるシェアを一気に増やすことができる千載一遇のチャンスになりそうだ。

 経済産業省「家電大型専門店販売」額は、2020年巣ごもり需要の反動から2021年には減少となった(図表③)。今後は地方の人口が減少し、住宅実需の減少も進んでいくことから、マイナストレンドになっていくことが懸念される。

図表③ ※経済産業省「商業動態統計」より筆者作成

 そうした中で人口減少度が小さい大都市圏での需要を押えていくことは、家電量販店にとって生き残りの選択肢となる。同じ統計によれば、2021年の首都圏、京阪神の1都2府4県の販売額合計は国内販売の5割を超えているようだ。大都市マーケットを中心にシェアを高めていくというヨドバシカメラの戦略は、何年か後に実を結ぶことになりそうだ。

「百貨」に近づく家電量販店

 ヨドバシカメラの大都市ターミナル攻略作戦は、並行して進められてきたEC強化ともうまく連動している。2021年のヨドバシカメラのEC売上高は2136億円と家電量販店トップ、リアル店舗小売業の中でも有数の規模を誇る。「バーチャル総合小売業」ともいえるほどの品揃えと、送料無料の魅力でお客を誘引し、ポイントカードに蓄積させたポイントを自社ECサイトで消費させる、という戦略が奏功している。

 これに関してはビックカメラも同様で、EC売上高は1434億円に上る(2022年8月期実績)。ただ、ターミナルの家電両反転核の大型商業施設で収集した顧客接点を活用してECを強化していくというノウハウでは、ヨドバシカメラは他社の追随を許さないところにいる。

 長い間、構造的不振が続く中で、その品揃えの幅を少しずつ縮小し続けてきたのが百貨店である。そうしても不振から抜けられず、多くの百貨店が店舗閉鎖に追い込まれ、ヨドバシカメラはその店舗を譲り受けて、その業容を拡大してきた。

 複合的な大型商業施設運営という面でも百貨店に取って替わりつつあるだけではなく、ECで品揃えをバーチャルに拡張することで、家電量販店は「百貨」を取り扱う業態に進化しつつあるようにも見える。ヨドバシカメラが、そごう・西武の売却案件の実質的買い手となっているというのも、こうした時代の変化の象徴的な出来事のような気がするのだ。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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