EC絶対王者のアキレス腱!?アマゾンファッションが日本で存在感を出すために必要な戦略とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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ローカルへの権限委譲で売上が上がったGAPの事例

winhorse/istock
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 私がまだ30代だった頃、GAP(ギャップ)の日本法人であるギャップジャパンのVice Presidentと話す機会があった。曰く、「レディースについてはローカライズが基本。各国のファッション事情に合わせてMDに柔軟性を持たせる必要がある」と。また、「ただし、メンズ、キッズについては本国コントロールの方がうまくゆく」といったように記憶している。

 実際彼らは、本国コントロールだったレディースファッションを、当時30%程度日本仕様にし、売上を上げながら全体のブランドの統一性と両立させたようだ。メンズとキッズは外国製がよいというのも理解できる。確かに、セレクトショップのような海外ブランドを日本に販売するビジネスモデルは、輸入品が多い(もちろん、寸法などをアジア人仕様にしているが)し、レディースの場合はSPAによるQR(クイックレスポンス)生産が一般的だ。

 私自身、中国、韓国、日本でアジアでのブランド買収案件に携わったとき、同じブランドだからといって、国が違えば評価も違うということを思い知らされた。例えば、日本製のブランド服を韓国にもってゆくと「落ち着きすぎている」「全体に色のトーンが沈んでいる」などの評価で、韓国で同じブランドで売れている商品は、色使いもデザインも「派手」なものが多かった。

 このように、国が違えば売れるものも違う。これは、外食でもそうだし衣料品もまたしかりなのだ。

AmazonベーシックとAmazon essentialsは日本仕様か

 さて、そこでアマゾンファッションである。「宇宙一の品揃え」を標榜する同社だが、お約束のナショナルブランド (NB)を揃えている点では、楽天ファッション、ZOZOTOWNもしかり。特段、アマゾンファッションに特徴があるわけでもない。問題は、同社のPBであるAmazon ベーシック(日用品、食品、雑貨など幅広い) とAmazon Essentials(ベーシックな衣料品が中心)である。私は、無敵のアマゾンなら、Amazonベーシックを徹底的に高コスパで、ベーシック、デュラビリティ(耐久性)の高い商品とし、最強コスパの「ユニクロキラー」を作るとばかり思っていたのだが、(ここからは推測になるが)どうも、AP (アジア、パシフィック)リージョンに関しては、伝え聞く話しに寄れば、アジアの本社コントロール下にある、あるいは、日本人以外の外国人幹部がコントロールしているのではないか、というのが仮説である。

  確かに最近のアマゾンジャパンは、以前ほどアパレル事業に積極的には見えない。むしろ最近の動きとしては、ライフコーポレーションなど食品スーパーとの提携によるグロサリー販売の強化、ルンバの開発元であるiRobotの買収による家中のロボット事業などが目立つ。ファッション商品のようにエリアごとに好みが分かれる複雑なデータ解析が必要なものより、生活に密着した必需品で、AI を利用し基本技術の標準化によるオペレーション効率向上に重きを置くビジネスが得意なように見える。

 このような言い方は正しくないのかも知れないが、日本はアジアの中ではダントツに衣料品の質が高くファッション性も高い。そこに、ファッション後進国のグローバル標準の商品を持ち込んでもうまくゆかないことは歴史が証明しているわけだ。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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