EC絶対王者のアキレス腱!?アマゾンファッションが日本で存在感を出すために必要な戦略とは

河合 拓
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無敵のAmazon(アマゾン)。すでに日本事業の売上高は、2021年度で2兆5000億円(Amazon.comアニュアルレポートより円換算)を超えEC専業企業として存在感を増している。しかし、ことファッションについては「それほどでもない」感じがするのはなぜだろうか。今回は、AmazonFashion(アマゾンファッション)が日本でいまだ大きな存在感を示せない要因を分析するとともに、成功するための戦略を提案したい。

米国で数々の名門アパレル を葬り去ったアマゾンファッションも…

 私自身、2年前に、「ユニクロを追随しうる企業があるとすれば、それはアマゾンファッションだろう」と予測し、米国で数々の名門アパレルを葬り去った アマゾンファッションに注目していた。

 実際、アマゾンジャパンは、明治通りに巨大な「Amazon fashion」の看板を掲げ、2017年には品川シーサイドに巨大なファッション撮影施設を設立。さらに「Amazon at Tokyo」と称するファッションショーも開催し、責任者のジェームス・ピータース氏は、「アマゾンファッションは、グローバルで最も伸びているカテゴリー」と、日本への積極投資を続けると述べていた。

  当時、私を含む業界関係者、メディアも「いつ、アマゾンファッションが日本に登場するのか」と期待をしていた。とある事情で、アマゾンジャパンのカテゴリー責任者と話をする機会を得たとき、私は「いつ、アマゾンファッションは日本に登場するのか?」と聞いたところ、なんと、「我々はすでに、Amazon basicAmazon Essentialというプライベートブランド(PB)を日本で販売し、また、日本の有力アパレルと組んで日本で販売し、事業を開始している」という回答だった。

 要は、アバクロンビー&フィッチやForever21が日本に初登場したときのようなイメージを、我々は持っていたのだと思う。それほどアマゾンファッションに対する期待も大きかったわけだ。しかしアマゾンファッションは、内部成長率は不明だが、すくなくとも私たちが想像していたほどの存在感はでていないし、その気配はない。

 海外コントロールのオフショア・ビジネスは失敗する

 私が、まだ現役の商社マンで某米国ブランドのOEMの仕事をしていたときのことだった。その米国ブランドのビジネスは本国主導で、米国の展示会に各国のライセンスホルダーが集まる。本国の展示会で、使用する原材料や絵型などが公開され、出張したライセンスホルダーは、スワッチ(素材の切れ端)とコンセプチュアルなデザイン画を持って帰るのだが、なぜか、持ち帰る素材名や混率が間違いだらけだった。しかし、数千の原料の混率や名前を頭に入れていた私達の素材チームは、間違った情報でも見ただけで、ほぼ正確に素材を特定できた。そして、その仮ベースの素材でサンプルをつくり、現物生産を開始した後に米国にアプルーバル(承認)をもらう。こんな、危険なビジネスをやっていた。私はいつも「もし、アプーバルをもらえなければ、この量産品はどうなるのだろうか」と、いつも心配していた。

 当時の担当者によれば、「米国のスピードでものづくりをやっていたら、生産を開始する時期になれば、もうシーズンは終わっている。スピード感が全く違うのだ。」とのこと。しかし、それならそれで、その事実をきちんと説明せず、アクロバティックな仕事をやり続けている商社の価値とはなんだろうかと、いつも疑問に思っていた。

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