「アパレルはオワコン」は勘違い!日本アパレル復活に商社が果たしてきた役割と不可欠な理由
アパレル勝ち残りに商社は不可欠
「アパレルビジネスは内需産業」というのはあやまった考えだ。正確には、内需があまりに強すぎたため、海外に出る必然性がなかったのである。当時は、今では死語となった「マンションメーカー」という言葉通り、「ファッションでジャパンドリーム」を夢見る若者がマンションの一室を借り、国内マーケット向けにビジネスをスタートしたものだ。そして、瞬く間に巨大化し、今でいう「ユニコーン企業」のように、当時のアパレル企業は急成長していった。それが、ファイブフォックス、サンエーインターナショナルといった名門企業の起こりである。
だから、商社も原料の輸出から製品の輸入に舵取りを変えても、平均年収1000万円以上という高額な給与を生涯にわたって得ることができたのだ。
同時に、アパレル産業は「オワコン産業」というのも間違っている。これは、上記の通り「日本で神風が吹く」と今でも思っている体質が世界化を怠ったからだ。現実に、ファーストリテイリングは10年前から世界の売上・利益が日本を抜き、日本を代表する名門企業になっている。冒頭に書いたように、アジア・パシフィックを一つのリージョンと捉えれば、アパレル産業は年平均成長率が10%近い成長産業であり、もともと日本は「世界から金を稼ぐ」ことが得意な民族であり、他産業でもそのようにしてきた。
私は今日、渋谷の街を歩きながら、若者の姿を見て「ここまで格好良い都市があろうか」とひとりごちたほどだった。それほど、東京はアジアのファッションリーダーたる可能性を秘めている。
しかし、そのためには、バリューチェーン上の紡績工場、商社、アパレル、リテーラーがそれぞれ、今までの成長産業である時代とは全く異なる戦略を執らねばならない。そして、繰り返しになるが日本の99.7%が中小企業である日本企業をデジタル化し、高い生産性を持ち世界化するには、どう考えても商社の力(人、資金、海外ネットワーク)がなければ不可能だ。
私は、この続新産業論を執筆するにあたり、研究会を立上げ、また日本の有能な経営者達と幾度もディスカッションを繰り返してきた。そして、私の出自であり、日本という国をここまでにした立役者であり、株式市場ではコングロマリットディスカウントにより万年PBR1.0を割っている、
異論・反論は大歓迎であり、前向きな討議にはいつでも参加したい。
プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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