地方百貨店の復調モデルか?藤崎の本店とサテライト店舗網の巧みな連動戦略
仙台の老舗百貨店・藤崎(宮城県/藤﨑三郎助会長兼社長)が堅調だ。コロナ禍では売上を落としたが、回復は早く、2024年2月期決算では純利益が前年の2900万円から3倍以上となる1億8200万円となった。首都圏のようにインバウンドの恩恵を受けづらい地方百貨店。復調の裏に透けるのは、東北エリアに13店舗展開するサテライト店の存在だ。
藤崎の窮地を救ったサテライト店舗

コロナ禍で百貨店業界は大きなダメージを受けた。特別な消費の場として、顧客に足を運んでもらうことが生命線だっただけに、人流ストップのダメージは甚大だった。久しく続く消費低迷と価格にシビアな消費者のマインドの変化も逆風となった。
そうした中、仙台を拠点とする藤崎を支えたのは、東北エリアに点在するサテライト店舗だった。同社は仙台市以外にも、石巻、古川、船岡、山形、一関など県内外にも店舗を構える。だが、仙台市内にある藤崎本店以外はすべて小型のサテライト店舗(2025年1月現在13店舗、外商事務所4店舗)だ。
その役割は、本店の補完だ。仙台までは足を運べない顧客の不便を、サテライト店舗で対応することで代替したり、本店商品の取り寄せ、友の会入金、本館購入商品の受け取り、会員入会申し込み、問い合わせなど販売以外の利便性を高めることで、藤崎の存在を東北エリアで浸透させてきた。

コロナ禍ではこの役割が存分に活かされることになる。移動に制約のある顧客に代わり、本来は取り寄せ対応だった商品を、各拠点に分配するなどで、利便性を高め、規模こそ小さいが、本店の”代替店舗”として、地域の不便を解消。顧客の需要をすくい上げた。
実際に2021年度は2019年比106%、2022年度は同2019年比108%でコロナ禍を乗り切る実績を残した。売上だけではない。ある意味では最も期待される、本店への”送客”でも、しっかりと結果を残している。
2019年以前にサテライトの利用がなかった新規顧客を約3万5,000名獲得。コロナ後には県外顧客の売上が、2019年比110%という成果をあげている。