ディスカウンティングの王道と進化を地で行く「アークス」、その強さの理由

佐久間康介(リアルエコノミー代表)
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“道内流通3極”の一翼であるアークス(北海道/猫宮一久社長)グループで、昨今売上を牽引するフォーマットとなっているのが、「スーパーアークス」だ。道内で食品スーパー(SM)を展開する傘下の6社のうち5社が同フォーマットを出店。なかでも中核会社のラルズ(松尾直人社長)では、全店舗の約4割を「スーパーアークス」が占めるまでになっている。道外チェーンの出店が進み競争が激化するなか、「スーパーアークス」はなぜお客を引き付けているのか。

既存DS業態の“仮想敵”として開発

 「道内のテレビや新聞は初進出してきた『ロピア』の話題で持ちきりだが、われわれにとって一番怖いのは『スーパーアークス』。価格とおいしさで広域からお客を引き寄せ、そのままファンにしてしまう。近くに出店されたら脅威だ」。道内の某SMの幹部はこう打ち明ける。

 ロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)が北海道1号店として昨年11月、札幌市内に開業した「ロピア屯田店」(札幌市北区)と商圏が重なる、ラルズ運営の「スーパーアークスノース」。ロピアがオープンする5カ月前の6月、ラルズは早々に同店のリニューアルを終え、“ロピア対策”の先手を打った。

 品揃えの充実や鮮度にこだわった生鮮を強化し、大容量商品も豊富に揃え、アークスの横山清会長兼CEOが標榜する新価格体系「納得価格」をアピールした。

 リニューアル効果は大きく、ロピア開業後も客足は落ちていないという。常務取締役営業本部長兼販売統括部担当の樋口裕晃氏は、「ラルズでしか手に入らない価値ある商品を豊富に揃えることで、お客さまから支持を得られている」と手応えを話す。

常務取締役営業本部長兼販売統括部担当の樋口裕晃氏
常務取締役営業本部長兼販売統括部担当の樋口裕晃氏

 ラルズが、「スーパーアークス」の1号店として「菊水店」(札幌市)をオープンしたのは2006年11月。すでに18年が経過しており、決して最新フォーマットというわけではない。「スーパーアークス」のベースとなっているのが、「ビッグハウス」というフォーマットだ。

 「ビッグハウス」は、旧ベル開発(現ベルジョイス:岩手県/澤田司社長)が開発したもので、1個よりも2個、2個よりもケースで買うとお買い得になるという「一物三価」をコンセプトに、価格訴求を強化したフォーマット。ベル開発が生みの親なら、育ての親はラルズと言われている。この「ビッグハウス」の進化系として位置づけられるのが、「スーパーアークス」である。

 樋口氏はこう説明する。「『ビッグハウス』は単品量販の業態だが、『スーパーアークス』は単品量販を軸にしつつ、単身もファミリーも取り込めるような幅広い品揃えを追求している」。そのうえで、「『ビッグハウス』にとって“戦いにくい相手”を想定して開発した」とも明かす。

 取り扱い商品数は「ビッグハウス」が約8000SKUだったのに対し、「スーパーアークス」は当初1万~1万2000SKUでスタートしたが、現在はさらに増えている。売場サイズは小型から大型までさまざまだが、「約600坪を基本としている。それくらいの広さがあれば、できることの幅も広がると考えている」(樋口氏)。

スーパーアークス明徳店
ラルズはDS業態「ビッグハウス」を転換するかたちで「スーパーアークス」の出店を進める(写真は明徳店)
スーパーアークス明徳店
所在地:北海道苫小牧市明徳町2-3-1
開業日:2024年11月8日(ビッグハウス明徳店から転換)
営業時間:9:00~21:00
売場面積:2892㎡

安さだけではない付加価値型の品揃え

 具体的には、どんな品揃えをしているのか。たとえば青果では、

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