コロナ禍で家庭用向け事業が急伸のカクヤスグループ、黒字転換に向けた今期の戦略は?

崔順踊(リテールライター)
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粗利益率の高い非酒類の商材を拡大へ

 ②の「増加傾向の業態・エリアへの営業活動拡大」については、コロナ禍において消費者は「大手飲食チェーン店」での飲食から「個人飲食店」の利用にシフトしている傾向がある。また、エリアとしてはリモートワークや出社制限などの影響が残る新橋や恵比寿などの地域に比べ、銀座、新宿・大久保、六本木・赤坂などの繁華街エリアではコロナ前の状況まで客足が回復している。これら集客の見込みが高い業態やエリアを中心に、営業活動を展開する。

 ③については、コロナ前である19年度には酒類以外の売上高構成比は12.6%だったが、21年度には16.4%まで伸長している。具体的にはロックアイス、食用油、ワンタッチ傘(雨の日当日に同社が飲食店に傘を届けるサービスを実施)、飛沫防止アクリル板、二酸化炭素濃度測定器、除菌用アルコール、ハンドスプレーなどである。これらの商材は比較的粗利益率が高いため、今後も取扱いを拡大しながら業務用全体の粗利益率向上を図りたい考えだ。

宅配を主軸に「家庭用」にも注力

 「家庭用」については、コロナ禍で業務用の配送にかわって、家庭用の売上を伸ばすチャンスができたことから、今期は、①家庭用配送枠の拡大 ②SKU数の増加 ③認知拡大の強化、の3つの施策を実施する。

 「家飲み需要」で好調な家庭用配送枠を拡大し、継続的に需要を取り込むため、年間60億円強に値する約10万枠の配送枠を上期中に確保する。

 SKU数の増加については、常温配送が可能で、業務用配送時間外の午前中と夕方以外で配送可能な商材として、ペット用品などの貯蔵品や炭酸水用のガスボンベ、冷凍食品に力を入れていく。冷凍食品の即配は現時点では33カ所で行っているが、今後は明和物産のノウハウも取り入れながら70拠点での展開を計画する。

 認知拡大策としては、29店舗ある郊外型店舗の「KYリカー」を「なんでも酒やカクヤス」に順次、ブランド変更する。今期は約20店舗の変更を予定しており、テレビCMなどの広告戦略における全体的な効果をねらう。

 また、若年層に対する認知度拡大およびフードデリバリー需要への対応としてUberEats(東京都)、出前館(東京都)とのクイックコマースにおける連携を強化していく。今期はUber120店舗、出前館28店舗の出店を予定している。

 そのほか、合併した旧ダンガミ・サンノーについては、業務用専門から一般家庭用宅配も展開し、シナジー効果の創出をねらう。明和物販は3温度帯の物流ノウハウを活かした冷食の置き配サービスの開始、お米やサプリメントなど二次商材の取扱いも拡大し、カクヤスとの相互送客を図る。

 原油価格高騰やインフレに伴う物価上昇などの影響も踏まえ、上記の施策を実行していく事で、来期は売上高1207億円(業務が786億円、宅配が225億円、POSが181億円、卸その他などが13億円)、売上総利益252億円、営業利益9億円、経常利益8億円、当期純利益5億円と、黒字転換をめざす。

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