プラットフォーマー起因の歪な過剰生産が生み出す巨大ビジネス、SheinとShoichi
限定ブランドとプライベートブランドの違い
それでは、数々の米国アパレルを死滅に追いやった巨大EC企業マーケットプレイスとはいかなるものか解説しよう。
巨大EC企業には、マーケットプレイス部門とPB部門があり、買い取りを行うのは後者だ。
前者は、可能な限り多くのテナントを集め、品揃えと低価格を武器に、膨大な数のビッグデータをAIで動態解析(お買い物行動を追いかける)し、その人にパーソナライズされたレコメンド(商品推薦)をメールで送る。手数料は、20%〜30%といわれている。需要が拡大しているときは供給を押さえれば勝つ。わかりやすい例で言えば、今の半導体がそうだ。日本は潰しまくった半導体工場をもう一度作っているという有様だ。
これとは逆に、供給が需要を上回っている時は、企業は顧客一人ひとりを捕まえ、追いかけ、絶対に競合に浮気をしないよう囲い込む。このように、市場の拡大期と成熟期では戦略が全く違うのだ。
この顧客の囲い込みは、買い取りをしないECプラットフォーマーにとって悩みの種だ。なぜなら、自社固有の商品がなければ、競合ECに奪われるからだ。かといって在庫の買い取りはやりたくない。
そこで考えられたのが「限定ブランド」である。これは、ECプラットフォーマーにとって極めて都合のよいやりかたで、「自社EC専用のブランドを売ってくれ、ただし、買い取りはしない。転売もゆるさない」というものだ。
ECプラットフォーマーのロジックでいえば、「よく売れる売場を貸してやり、販売データも公開してやるから自由に売ってくれ。売れた分だけ手数料はもらうし、残れば返す」というわけだ。
こうして、工場と直接取引をするのがD2Cである。アパレル産業界は、SPAもそうだが勝手な解釈をている。誤った認識を正すべきだ。
つまり、工場にアパレルが持つ在庫コントロール機能がなければ、工場とD2CはWin-winとはならないのである。
工場というのは、安定稼働をKPIとするため、ダイレクトに消費者に販売するためには受注生産しかない。ZOZOがその昔、ZOZOSUITSで受注生産にトライしたのは、それが理由だ。
ECプラットフォーマーからすれば、供給元は工場だろうがアパレルだろうが「We don’t care」である。
「限定ブランド」とは、工場側にとってすれば、
一方、ECプラットフォーマーにとってみれば、返品可能なPBのようなもので極めて都合がよい。こうした世界的動きの結果、工場には残反、残品が山のように残り、工場は複数のアパレル、アパレルリテーラーに在庫を半値八掛けで売りさばいているわけだ。この構造は、日本と全く同じである。
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