ファーストリテイリング2012年8月期決算実況中継(上)

2012/10/15 00:00
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 本日から3日間のBLOGでは、半期に1度の恒例企画「ファーストリテイリング(山口県/柳井正社長)決算実況中継」(10月11日@ファーストリテイリング東京本部)をお届けする。日本でもっとも元気のあるチェーンストア企業の経営に学びたい。(談:文責・千田直哉)

 

 ファーストリテイリングの2012年8月期決算(連結)は、売上高9286億円(対前期比13.2%増)、営業利益1264億円(同8.7%増)、経常利益1252億円(同16.9%増)、当期純利益716億円(同31.8%増)だった。

 

 数字的には、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益ともに増収増益を達成した。

 

 グループ事業別実績は、①国内ユニクロ事業は売上高6200億円(対前期比3.3%増)、営業利益1023億円(同3.6%減)と残念ながら増収減益になった。春物在庫を絞り込んだため、3月~5月の春物商売が不振。7月中旬まで気温が低く推移した影響で夏物販売本格化が遅れ、既存店売上高は0.5%の減収(客数5.3%減、客単価5.1%増)。原料コストアップにより粗利益率が低下したためだ。

 

 ②海外ユニクロ事業は、売上高1531億円(同63.4%増)、営業利益109億円(同22.9%増)だった。

 中国・香港事業は、66店舗を出店し増収増益。台湾は16店舗を開業してほぼ計画通りの増収増益。韓国は18店舗を出店して増収増益だったが、景気減速で第4四半期は既存店が前年実績割れを起こし営業利益は計画未達だった。

 シンガポール・マレーシアは5店舗を出店し、計画通りの増収増益。タイは4店舗を出店し好調な売上が続いている。

 初進出したフィリピン1号店は大成功、売上は計画を上回り好調だ。

 

 アメリカではニューヨーク3店舗の売上が伸びず、下期は計画を下回った。ブランドビルディングのための先行投資により、通期では大幅な赤字だった。

 フランスは、ほぼ計画通りの業績だった。ラ・デファンス店増床の影響で若干の減益に終わった。

 イギリスは上期からの減益トレンドが継続している。第4四半期に売上が低迷し、在庫処分によって赤字幅が拡大。計画には未達だった。

 ロシアは収益性が改善した。計画通りの業績、通期では黒字を達成している。

 

 ③グローバルブランド事業は売上高1530億円(同23.3%増)、営業利益145億円(同65.4%増)だった。

 ジーユー事業の売上は約580億円。営業利益約50億円。ゆるパン、マキシワンピースなどのヒット商品があった。またTVCM効果により、既存店売上高が35%増。35店舗を出店し、期末店舗数は176店舗になった。

 セオリー事業は、過去最高益を更新した。とくに日本が好調で、既存店の増収トレンドが継続している。またPLST(プラステ)事業が軌道に乗った。

 コントワー・デ・コトニエ事業は、春夏コレクションから売上回復、計画通りの増収増益だった。プリンセス タム・タム事業は、計画通り前年並みの実績だった。

 

 さて、2012年8月期の主なポイントを紹介すると、「ヒートテック」は全世界で1億点を販売した。また、「ウルトラライトダウン」「暖パン」「AIRism(サラファイン、シルキードライ)」「イージーレンギスパンツ」などコア商品の販売が好調だった。

 それと、中国・台湾・韓国などのアジア地区で大量出店。ニューヨーク5番街店、台北、ソウル、銀座にグローバル旗艦店をオープン。ユニクロブランドの認知度が飛躍的に向上した。ジーユーの銀座旗艦店もオープンし、年商は500億円を突破した。セオリー事業は大幅な増収増益を達成した。

 

 我々のファーストプライオリティは、「ユニクロを真のグローバルブランドにする」ということだ。ユニクロが世界中の人々に知れ渡り、その日から、お客さまに喜んで買っていただける商品とサービスを提供することにある。

 

 では、「ユニクロを真のグローバルブランドにする」ために何をすべきか?

 以下では、いくつか挙げていきたい。

 

 まず、アジアで圧倒的なナンバーワンになることだ。2013年8月期のアジア(日本を除く)全体の売上高は1700億円以上が目標だ。その他、アジア・アセアン諸国で出店エリアを拡大したい。

 今年6月にはフィリピン1号店を出店、2013年秋にはオーストラリアへの出店も決まり、インドネシアへの進出を計画し、インド進出の検討も開始した。

 今後のアジア市場の展望を言うなら、グレーターチャイナ(中国・香港・台湾)、アセアン諸国、インドは最大の成長機会になるだろう。この地域には40億人の人口があり、次の10年で1/3~1/2くらいが中産階級になるはずだ。中産階級が爆発的に増えることは生活材が爆発的に売れるということだ。現状は何も持っていない人々がたくさんの生活材を購入する。我々はこれを「ゴールドラッシュ」だと言っている。

 

 カントリーリスクを懸念する声も上がっているが、中国は中長期的に見れば世界最大の経済大国になる可能性が大きい。しかも現在、市場に参入しているプレイヤーのほとんどがローカルプレイヤーであり、流通外資では我々とZARAとH&Mの3社が競争している状況。いまのところZARAとH&Mには勝っている自負がある。一時的に売上がダウンしたとしても、中長期的には伸びると予想するので、毎年100店舗は出したい。いち早く1000店舗をつくった企業の勝ちだと思う。

 とはいうものの、拙速で良いということではなく、我々は、「1店舗1店舗が儲かる店」をつくっていきたい。最終的には売上高営業利益率15%以上が目標だ。

 

 世界中で大型店を中心に年間200~300店舗を出店したい。2020年の店舗数の目標は、日本で1000店舗、中国で1000店舗、その他のアジアなどで1000店舗、欧米で1000店舗の合計4000店舗だ。

 その中心になるのがグローバル旗艦店やグローバル繁盛店、メガストアであり、世界の主要都市に出店する。グローバル旗艦店は「世界に向けたショーケース」であり、グローバル繁盛店は「ユニクロの最高のサービスとエンターテイメント」を提供する店舗だ。

 

 グローバル旗艦店については、2014年春をめどに池袋店(東京都:仮称)、上野店(東京都:仮称)を出店する計画だ。

 

 グローバル繁盛店としては、ビックロ新宿東口店(東京都)を9月27日にJR新宿東口に開業した。この立地は日本最高であり、今後、1番店になると考えている。ただ単純に電化製品の販売店と我々のような服の店が共同出店するということではなく、異業種がお互いに協力し合って、新しい発想でいままでにない集客力のある小売業をつくる。とくに外国人、また日本全国から新宿を訪れたら、必ず寄られるお店、にしたい。

 

 この11月2日に開業予定の銀座プランタン店(東京都)はメガストアだ。プランタン銀座の2フロアに「ユニクロマルシェ」という新しい店舗をつくる。ファーストリテイリングのグループブランドをひとつの店舗で展開する新業態で、「女性のための、新しいユニクロ」だ。

 銀座は、とくに20代~40代の女性の買い物客が多い。幅広い価格帯で、いろいろなタイプの服をワンストップで選べる店にする。

 我々はいままでユニクロだけで出店していたが、「ユニクロマルシェ」では、ユニクロだけでなく、セオリーのPLST、ジーユー、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タムも共同で出店する。プリンセス タム・タムはパリを中心に100店舗以上を出店しているランジェリー専門店だが、ここが日本初出店となる。

 また、ユニクロ、セオリー、コントワー・デ・コトニエとの初のコラボ商品として、ウルトラライトダウンを使い非常にスタイリッシュに仕上げた「T‐DOWN」というアウターをつくった。

 こうしたグループ企業間のコラボレーションで新しいタイプの商品が続々と生まれつつある。
 

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