「1200年前の超一等地」に出店! コメダ京都市内1号店の立地に京都市民がうなる理由

2023/12/29 05:59
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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名古屋発の「コメダ珈琲店」が、ローカルな喫茶店だというのは過去の話。すでに47都道府県への進出を果たし、ナショナルチェーンの地位を確立している。コロナ禍を通じて業績は今も好調、ビジネスモデルへの注目度も高い。そこで京都市内の店舗に足を運び、その独自の出店戦略や魅力などを地元民の視点から考えてみた。

京都でも人気があるコメダ珈琲店

平安京のメーンストリート

 今回の行き先は、京都市中京区の「コメダ珈琲店 二条駅前店」。オープンは2010年12月。コメダにとって08年12月の八幡店(京都府八幡市)、10年5月の宇治店(京都府宇治市)に続く店である。

 京都府3号店ではあるが、私の住む京都市という条件だと1号店になる。注目は、その立地。地元民から見ると大変興味深く感じる。

 普通、有名な飲食店が京都市内に初進出する場合、「河原町」や「烏丸」といった賑やかなエリアに出る場合が多い。人が集まる繁華街やビジネス街は、厚い市場が広がるほか、知名度を高める効果も大きいためである。たとえばスターバックスは、同エリアの四条通沿いに1号店を投じた。

 一方、コメダが店を構えたのは、店名からもわかるようにJR西日本山陰本線の二条駅前。業界通の専門家やアナリストからは、「あえて市中心部から外れたところを選ぶ、コメダらしい戦略だ」といった物知り顔のコメントが聞こえてきそうである。

 しかしこの場所、かつて“超”一等地だったことを知っている人はどれだけいるのだろうか。「かつて」と書いたのは約1200年前、平安時代のことだからだ。

二条駅前店が面している通りは、平安京のメーンストリートだった「朱雀大路」

 店が面している「千本通」は、平安京のメーンストリート「朱雀大路」にあたる。この通りは、天皇が住んでいた「内裏」、政治を執り行う各官庁などが配置されていた平安京の正門「朱雀門」から南へまっすぐに伸びていた。「朱雀門」からの距離も絶妙で、約200mの至近である。

平安宮の正門「朱雀門」跡を示す石碑
平安宮復元図の下部に赤で示してあるのが「朱雀門」跡。京都市1号店は、そこから南約200mにある
JR西日本山陰本線の二条駅前には「平安京と平安宮」と題した資料を見ることができる

 つまり二条駅前店は、当時の地図と重ね合わせると、平安京を象徴する門の真正面に店を構えていることになる。地元民としてはスゴイことだと思う。世が世なら、平安貴族が出勤前、コメダ珈琲店でモーニングセットを食べるという光景が見られたかも知れない。

 「平安時代の話を持ち出すなんてナンセンス」と笑う人もいるはずだ。しかし京都では、歴史的人物や事象はかなり身近である。以前、私は京の台所として知られる「錦市場」を取材したことがあるが、理事長は歴史について「豊臣秀吉」の話から始めた。また祇園祭の時期には、「応仁の乱」前後で山や鉾の配置がどう変化したかを示す地図が、当たり前のように売られている。

京都では歴史的な人物や事象は身近だ。祇園祭の時期には、「応仁の乱」前後で山や鉾の配置がどう変化したかを示す地図が、当たり前のように売られている

 こう考えると、二条駅前店の立地は1号店にふさわしいと感じている地元民は、少なくないのではないか。

 コメダが事情を知って出したかどうかはわからない。だが、もし狙ったとすれば、京都人の心をがっちり掴む、ユニークな戦略であると言わずにいられない。

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記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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