“前生”畏るべし

2012/01/16 00:00
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 テニススクールに通っていて痛感するのは、「後生畏るべし」ということだ。

 10代、20代の若者たちは、“40の手習い”で始めた私とは大きく異なり、伸び率が大きい。時間軸でのスキルアップぶりを見ると、私の5~6倍の勢いで上達している。3か月も空けて対戦すると、もうまったく歯が立たなかったりするし、その腕前を買われてアシスタントコーチになったりしている。

 若いことの強さを思い知らされるのである。

 そんな折には、「士別れて三日なれば、刮目(かつもく)して相待つべし」という言葉を思い出す。

 出典は『三国志』で優秀な者は、僅かな時間で大きく成長している可能性があるので3日も空けて会った時には、心して対峙せよという意味だ。

 成長性の高い若者たちは、みんなさまざまな分野において「士」なのである。

 ところが「“前生”畏るべし」と思わずうならされてしまう人がいる。

 私より20歳も年上であるにもかかわらず、私よりも明らかに鋭い角度で伸び続け、ビジネス上では休むことなくチャレンジを繰り返し好業績を残している。

 アイリスオーヤマ(宮城県)の大山健太郎社長だ。

 もう10年以上にわたって懇意にさせていただいている。

 思い出すのは、1999年のこと。当時の同社の主要商品は、プラスチック収納、園芸用品、ペット用品など。私は「電動工具や照明などの家電製品に商品領域を拡大することは決してないですよね」と確認した。大山社長は、「いやいや、分かりませんよ」と笑っていたが、私は「ウソだろう」と心中では思っていた。

 ところがそれから数年を待たずに米国のブラック&デッカー社と業務提携して電動工具分野に参入してしまう。新型インフルエンザが流行の兆しを見せれば、使い捨てマスクの増産体制をどこよりも早く組み、照明では2年前にLED(発光ダイオード)市場に参入を決め、いまでは家庭用照明でシェアナンバーワンを獲得するに至っている。
 

 ネット通販に商機があると見れば、すかさずサイトを立ち上げ、需要を先回りする。

 さらに2011年はヘルス&ビューティケアの分野にも参入を決め、サプリメントやH&BC(ヘルス&ビューティケア)の世界にまで足を踏み込み、販路を拡大している。

 実は、20歳も年上の方に成長速度で負けるという感覚を持つことは、ほとんどない。これが後生としての強みである部分である。

 だが、唯一、数か月に一度、大山社長にお会いする時には、「やられているなあ」と毎度毎度、屈辱にも似た感覚を抱くのである。

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