シャボン玉石けんに感激してきました

2010/05/13 00:00
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 シャボン玉石けん(福岡県/森田隼人社長)という企業がある。

 

 先にお断りしておきますと、1960年代を席巻した歌番組『シャボン玉ホリデー』のスポンサーは牛乳石鹸共進社であり、シャボン玉石けんとは全く関係ありません。

 

 さて、それはさておき、シャボン玉石けんは、1910年の創業で今年は設立100年の節目に当たる。

 しかし、同社の本当の意味での創業は1974年。化学物質を使用した合成石けんから、人や環境にやさしい無添加石けんの製造・販売に切り替えた時と言える。

 「身体に悪いと分かった商品を売るわけにはいかない」と森田光徳前社長(故人)が一大決心した末の大転換だった。

 

 ところが、当時、消費者は、洗剤の安さにだけ価値を見出した時代。売上はそれまでの1%にまで激減し、半数以上の社員が同社を去ることになってしまう。

 

 しかも、その後、17年間、赤字経営が続いた。

 

 倒産寸前まで追い込まれた森田前社長は、合成洗剤と石けんでどうちがうのか、安全性、洗浄力、値段の比較、あらゆる角度から比較して、人と自然にやさしい洗たく、洗浄術を指南する著作『自然流「せっけん」読本』(農山漁村文化協会刊行)を5カ月を要して書き上げ、上梓。講演活動を開始。自社の存在意義を世に問うた。

 

 これが大きな転機になった。

 

 読者や聴講者、また彼らを介した口コミによって、直接、同社に注文が舞い込むようになったのだ。その結果、大転換から18年目にしてようやく黒字化を達成した。

 

 2007年に社長に就任した森田隼人さんは弱冠33歳。父譲りの信念で同社を牽引する。

 「『健康な体ときれいな水を守る』ことをモットーに私たちは天然素材だけを使った無添加石けんにこだわります」。

 

 天然素材を熟練の職人が昔ながらの釜炊き製法(ケン化法)で手間ひまをかけ、1週間から10日間、じっくり丁寧に炊きこんでいるために、売価は相対的に高くならざるをえない。

 だが、「この手法を変えるつもりはない」と断言する。

 

 最近では、同社の考え方を理解する小売企業も増えてきており、売上高は漸増トレンドをキープ。また、韓国、中国、台湾、米国などの海外への進出にも乗り出し、日本国内のみならず世界環境の保全に向け、地歩固めをスタートさせている。

 

 (『チェーンストアエイジ』誌2010年7月1日号でシャボン玉石けんの森田隼人社長のインタビューを掲載します)

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