使えるお金はあるけれど
Tさん「65歳を過ぎるとねえ、自分のPL(損益計算書)をつくったりするんだよ」
私「えっ? 過去にさかのぼって、収支を計算するんですか?」
Tさん「違う。違う。これから10年後とか、将来に向けての収支だよ。年金なんかの収入があって、株式の配当があって、資産を切り崩したりすることをシミュレーションして、10年後や15年後まで考えるんだよ」
私「へえ」
Tさん「先日、実際にPLをつくって確信したのは、75歳までは、まったく問題なく過ごせるということだね。息子たちに残したとしてもまだ余裕があった」
私「Tさんは上場小売業の役員だったから、相当恵まれていますよ」
Tさん「そうかもしれないね。ところでだ。75歳までシミュレーションしていくと、使えるお金があることが分かるんだよ。あの世までは持っていきたくないからね」
私「その需要を狙って、大手小売業を中心に“シニアシフト”が取りざたされていますよ」
Tさん「ところが、実際に使えるお金はあるんだけれども、買いたいものが何もない。食べ歩きや旅行にばっかり行っても仕方ないしねえ」
私「おしゃれな服で身を飾るっていうのはどうです」
Tさん「ボクの体型だと、ウエストと股下の合致したズボンさえ売っていないんだ。きっと、“シニアシフト”の商品政策の担い手は、若手なんだろうな。だから、机の上でばかり考えていて、シニアが本当に求めているモノ分からない」
私「そういえば、イオンの岡田卓也名誉会長相談役も同じようなことをおっしゃっていました。だからイオングループのOB・OGを再結集して、“シニアシフト”のビジネスを始めようかなって。もちろん冗談でしょうけど」
Tさん「あっそう。ボクも事業を起こそうかな。シニア起業家は、いま流行っているし…。第一、ヒマだし…」
私「もしかすると、Tさんのような境遇にある方の中から、とてつもない事業成功者が出てくる可能性がありますね」
Tさん「そうなるとまずいなあ。また、お金が残っちゃうよ(笑)」
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