コーナン商事、建デポを買収 コーナンPROとの相乗効果で首都圏攻め!

千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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コーナンPROの強み

 コーナンPROの商売の肝は、プロ業者とのコミュニケーションにある。最初は「何も揃っていない」と不満を見せるお客の要望を飽くことなくじっくり聞きだし、即座に品揃えとして具現化する。当然、店舗ごとに品揃えは異なることになる。その繰り返しによって、お客との信頼関係を構築。やがて口コミでファンは増えていく――というものだ。

 もうひとつのコーナンPROの強みは技能社員だ。ハウスメーカーや建材メーカーで働いた経験を持つOBを主体にして1店舗に10名弱が在籍する。

 職人であるプロ業者は、従業員に付くことが多い。だから、同社の従業員は名刺を配ったり、名前を覚えてもらうことに専念している。

 疋田社長は、「コーナンPROが実践しているのは接客ではない」と言う。「むしろ従業員はお客様に教えていただいていることが多い。お客様のほうが商品に詳しいので、要望があったものを即座に揃えるようにしている」(疋田社長)。

 その一方で、建材屋や材料屋では当たり前の現場納品サービスや掛売りはいまだに行っていない。

 幹線道路沿いでプロ業者の移動距離範囲に店舗があればそれほど大きな問題ではないという考えからだ。掛売りでは、「コーナンPROビジネスカード」を発行して、最長約3ヶ月の支払い猶予を持たせている。

 「配達や掛売りサービスを提供すればさらに売上は上がるかもしれない。しかしながら、コストはプッシュされるので儲かるかどうかは分からない」(疋田社長)。

 プロ業者の動きで読み違えたのは、ポイント付与についてだ。当初、プロ業者がポイントを集めるために来店するとは思いもしなかったが、蓋を開けてサービスを開始してみれば、意外にも収集しているお客は多いという。

建デポ買収で東西日本制覇へ

 今後、コーナンはコーナンPROの出店を加速する。20192月期に出店した22店舗中実に11店舗がコーナンPROだ。20202月期も7店舗をオープンする計画である。

 ホームセンター市場の規模は、過去10年にわたって4兆円目前で足踏みしている。各社各様に次期成長に向けて新フォーマットを打ち出してはいるが、大きな成功を収めているところは少ない。そのなかにあってコーナンPROの躍進は注目に値する。

 さらに、この423日にコーナンはLIXIL(東京都/大坪一彦社長)傘下の建デポ(東京都/斉藤泰社長)を約240億円で買収すると発表した。

 建デポは、プロ客向けの会員制建築資材卸売店舗「建デポ」を首都圏中心に展開。20183月期の売上高は3373200万円(対前期比0.5%増)、当期純利益は104500万円の赤字だった。コーナンは、自社の商品企画力、販売力、物流、システムなどの経営ノウハウを注入、融合することで、首都圏での事業基盤強化を図り、シェアアップに乗り出す。

 「67店舗中41店舗が関東圏。当社も関東に店舗はあるがコーナンの知名度はそれほど高くないと認識している。だから苦労してきたわけが、これを勝機ととらえて、相乗効果を図っていきたい」(疋田社長)。

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記事執筆者

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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