判定コストが激減!青森発、コメの銘柄を10秒で判定するAI搭載アプリとは

2024/02/02 05:59
吉牟田祐司
Pocket

AIによる銘柄判定を実現して特許を取得

「Rice Tag」アプリ判定画面
「Rice Tag」アプリ判定画面

 KAWACHO RICE自体も登録検査機関であり、8人の検査員が在籍している。取締役の川村航人氏もその1人で、銘柄米を取り扱ううえで検査の負担を軽くしたいという思いを以前から抱いていたそうだ。取引先からの誘いで参加したイベントでAIに触れる機会があり、そこで「AIを使った銘柄判定ができないか」という話になったことが開発のきっかけという。しかし思った以上に開発の難易度は高く、一緒に作る予定だった会社が撤退してしまったそうだ。そこで相談したのが、同じ三沢市に本社を置くヘプタゴン。クラウド導入を主にDXサービスを提供、東北エリアで初めてAWSAmazon Web Services)の活用をサポートするAPNAWS Partner Network)アドバンストコンサルティングパートナーに認定されている。すぐに「できると思います」という返答があり、青森県の補助金や地元銀行のチャレンジプログラムなどを活用して資金を調達し、20197月に「Rice Tagプロジェクト」を立ち上げた。

 「Rice Tag」はバックエンドシステムにAWSを採用し、MLMachine Learning=機械学習)の開発・運用環境はAmazon SageMakerで構築した。1回あたり10001500枚の銘柄米の画像を使用して機械学習のモデルをつくり、10サイクルのモデル学習を短期間で繰り返すことで認識精度を高めていったという。銘柄米を撮影した画像には1枚ごとに輪郭画像を作成し、銘柄の特徴をもとに米粒の形やサイズも加味した推論処理を実行していった。そうやってAIの開発と実証実験を進め、202012年には銘柄判定を実現。さらにブラッシュアップして、2023322日に「米の銘柄判定方法及び銘柄判定プログラム」として特許登録した。現在は1品種だけでも5000枚以上の画像をAIが覚えている状態だそうだ。

 川村氏は「自分たちが作り上げたものが、1つの技術としてきちんと認められるか。そこに興味があった」と話す。「Rice Tag」をインストールしたスマートフォンで撮影キットのトレーに載せた玄米約50粒を撮影すると、AIが形状や色などに特徴のある米粒を選び出し、数十秒ほどで銘柄を判定する。検査員が目視して判定を下すまでの時間と、AIが判定してスマホ画面に結果を表示するまでのリロード時間はほぼ変わらないそうだ。コメの銘柄は農作物検査員の国家資格を持つ検査員の目視で行うことが法律で定められているため、すべてをAIに委ねることはできないが、検査員の負担を軽減できるメリットは大きいだろう。

1 2 3
© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態