RFIDはもう古い?進化を続ける中国無人コンビニ「無人超市」の実力をレポート!

取材・文:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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RFIDタグが運用の足かせに

 こうしたシステムを支えているのは、画像認識技術と重量センサー、そしてRFIDの技術だ。ユーザーがゲートを通過して入店する際に顔認証を行い、天井部に設置されたセンサーカメラによって売場での行動を分析。さらに商品棚に設置した重量センサーが、商品を手に取ったかどうかを感知する仕組みとなっている。

ゲートを通過
商品を手に取ってゲートを通過するだけで、自動的に決済が完了する

   ただ、画像認識と重量センサーだけでは精度が不十分なため、補完的にRFIDの技術も導入している。そのため、RFIDタグの貼付や商品情報の入力といった煩雑な作業が必要となり、運営上の負担となっているのが現状だ。また、RFIDタグそのものも、以前より価格は下がったとはいえ、販売する商品の単価からすると決して“リーズナブル”とは言えない。さらに、水分や熱に弱いといった性質上の問題も運営上の足かせになる。

 つまり、運営コストを考えるとRFIDの導入には課題が山積みだが、無人店舗を成立させるうえでは、RFIDを使わざるを得ないといったジレンマを京東は抱えていたのだ。

すべての商品にRFIDタグが貼付
すべての商品にRFIDタグが貼付されている

全身認証システムで脱・RFID化に挑戦! 

 そうしたなか京東は今年4月から、本社内にある1号店において、RFIDを使わない新たなモデルの実験を開始した。RFIDを導入しない代わりに大きく進化させたのが画像認識技術で、従来の顔認証ではなく、顧客の全身を認証する方式を京東で初めて採用。開発担当者は、「顔認証から全身認証に切り替えたことで、(顔認証とRFIDを併用している既存店よりも)、認識の精度は格段に上がった」と胸を張る。商品棚にはこれまでどおり重量センサーを設置し、商品の動きを感知しているものの、「あくまでも補完的なもの」(同)であるという。

実験店舗の店内の様子。
実験店舗の店内の様子。天井部に設置されたカメラと、棚の重量センサーで利用客の行動を認識する。RFIDタグがないため、全体的にスッキリした印象だ

 また、この新しい運営モデルでは、1人のユーザーがどれだけ多くの商品を手にとって退店したとしても、ほぼ問題なく認証できるとのこと。ただし一度に入店できるのは十数人までで、それ以上になると正確に決済できなくなる可能性があるようだ。しかし、「アルゴリズムを進化させていけば、カバーできる客数はどんどん増えていく」と開発担当者は説明する。

 画像認識技術を進化させ、RFIDに依存しないローコストモデルの無人CVSを実現したことで、京東は無人超市の多店舗展開にはずみをつけることになる。

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取材・文

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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