小売業の衛生対策レポート:コロナ禍で高まる消費者の衛生意識 今後は店舗の環境衛生にも厳しい目
中国・武漢での事例を参考 イオンモールの最新感染症対策
新型コロナウイルスの影響が長期化するなか、5月14日、小売業12団体は「小売業の店舗における新型コロナウイルス感染症 感染拡大予防ガイドライン」を定めた。政府による専門家会議で提言された「新しい生活様式」の実践例を踏まえ、基本的な考え方と具体的な取り組みを盛り込んでいる。ガイドラインが定められたことで、各店舗にとってはより効果的な感染予防対策が実施できるようになった。
そうしたなか、外出自粛や休業要請によって人の流れを抑え込んだことで感染者数は減少に転じ、5月25日に緊急事態宣言は全域解除された。これを受けて、イオンモール(千葉県/岩村康次社長)は同月28日、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏にある同社ショッピングセンターを、営業時間を短縮させて再開させた。いずれも感染防止対策を徹底したうえでの営業活動だが、なかでも千葉県千葉市にある同社旗艦店「イオンモール幕張新都心」では、感染拡大を防ぐための先進的な取り組みを行っている。実施にあたっては、コロナ禍での営業活動をすでに経験している中国・武漢市にあるイオングループ商業施設の事例を参考にしたという。
まず目を引くのが、AI検温ソリューション「センス・サンダー(Sense Thunder)」を8カ所の出入口すべてに設置していることだ。同ソリューションは、赤外線カメラにより1.2m圏内に近づいた対象者の体温を、0.5秒という短時間で測定。37.5度以上を検知するとモニターが赤く光り、発熱している可能性があることを対象者に知らせる。万一、来場者の中に発熱している人がいれば、入館を遠慮してもらうように呼び掛ける。同測定器は従業員の勤務スペースにも置き、発熱した場合には勤務を禁止する。
また、モール中央のインフォメーションカウンターには、混雑度状況を示す案内パネルを設置している。入館管理システムによって入場者数をすべて把握したうえで、厚生労働省の指針に基づき、モールの共用部と店舗面積、換気量から、密集と密閉指標を、さらにそこから混雑度合いを算出し、パーセンテージで表示する。混雑度合いが80%を超えた場合は、館内アナウンスでソーシャルディスタンスの確保を呼びかけ、90%を超えた場合は入場制限を行う。
さらに、6月15日より全面リニューアルした公式アプリ「イオンモールアプリ」では、お客の自宅からモールまでの経路案内や館内でのルート案内機能を新たに搭載。リアル店舗とデジタルを融合して利便性の向上を図るものだが、移動距離を短くし、お客同士の接触を減らすねらいもある。
高まる衛生意識に応えて より徹底した環境衛生を
さて7月に入り一時のような感染の広がりは見せていないものの、封じ込めたとは言い難い今、専門家らは第2波への警戒を強めている。そんなウィズコロナといわれる時代にあって、消費者の意識や行動はどう変わってきたか?
大手調査会社のマーケティング・コミュニケーションズが今年5月に20~60代の男女を対象に実施した「生活意識に関する調査レポート~自粛期間における影響は?」の調査結果によると、新型コロナウイルスによる意識の変化として、衛生に関する行動(手洗い・うがいの徹底、衛生関連商品の購入)への意識は向上し、とくに男女ともに年代が高い層で顕著であることがわかった。さらに、衛生関連商品の購入が増加した人のうち、「価格重視(安い商品)で購入」の値が大きく減少した一方、「効果が期待できそう」「信頼できるメーカー」の商品を購入する人がコロナ以降で大きく増加していた。
新型コロナウイルスについてはまだわかっていないことが多く、有効なワクチンも治療薬も開発中であるだけに予防に徹するほかなく、衛生意識が高まったのは当然の結果といえるだろう。そのうえで、自分の身を守るために、より信頼できるものへと意識も行動もシフトした。この傾向は商品だけでなく、自分が訪れる施設設備や環境に対しても今後ますます強まることだろう。ライフラインの役割を果たすSMやGMSにおいては、第2波への備えとして、これまで以上にエビデンスに基づくしっかりとした環境衛生が求められている。
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