40年変わらぬ素朴なドーナツにシニアが飛びついた! 気持ちを動かす「実感」を込めたコピー
「今食べると素朴な感じだけど、昔は甘いものって特別な時しか食べられなかった贅沢品だったんだよ」と。
そのいかにも実感のこもった言葉に、POP担当の店員は「それだ!」と思いました。そして、以下のようなキャッチコピーを書いたのです。
今となっては素朴でも昔はこれが贅沢だったんだ!!
このPOPをつけると、あんドーナツは飛ぶように売れていきました。60代以上のシニア層のお客さんがその言葉に共感して、買いたいキモチが高まったのです。
そのコピーに本当に実感はこもっていますか?
お菓子の二木の本部では、チェーンの他の店舗でも、あんドーナツに同じPOPをつけて売るように指示しました。すると、ほとんど店舗では、同じようにバカ売れしました。しかしある店舗ではまったく売れません。「なぜだろう?」 と調べてみると、実はその店だけ別のPOPをつけていたことがわかったのです。店員が届いたPOPを見て、キャッチコピーがピンとこなかったので勝手に書きなおしていたのです。それは‥
「昔懐かしい味、今も昔も変わらぬ贅沢を」
というものでした。内容はバカ売れしたPOPと変わりません。しかし実感がこもっていないコピーは、シニア世代の気持ちを動かせなかったのです。
さて、冒頭の「コロナ支援・訳あり商品情報グループ」に話を戻しましょう。どんな紹介文だと、より多くの商品が売れるようになるでしょう? もうおわかりですよね?
それは「実感のこもった文章」です。本当に困っている。こんなにいい商品なのに廃棄するには忍びない。何とか救ってもらえないかという実感のこもった文章を読むと、人は感情が動かされ、その商品が買いたくなるのです。たとえば以下のようなフレーズです。
「収穫しても行き場のない野菜たち。悲しいです。苦しいです。困っています」
「1500個のケーキが、食べてくださる方を求めています!」
「種蒔きから一年半以上かけて大切に育ててきたわさびですので、廃棄せずに皆様に召し上がっていただきたいです」
あなたの書くコピーには、実感がこめられていますか?
・プロフィール
川上徹也(コピーライター 湘南ストーリーブランディング研究所代表)
大阪大学人間科学部卒業後、大手広告会社勤務を経て独立。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。中でも、企業や団体の「理念」を1行に凝縮し旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した。
著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『コト消費の嘘』(角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)『売れないものを売る方法? そんなものが本当にあるなら教えてください』(SB新書)など59万部突破。海外にも多数翻訳されている。