シチュー市場、秋冬の煮込み料理の定番、特別感のある新メニューも登場し活性化

文:石山 真紀(フリーライター・売場研究家)
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シチュールウカテゴリーの金額PIおよび金額PI対前年推移

年末ならではの限定品や、ご飯にかけて楽しむシチューも

 シチュールウのカテゴリーはエスビー食品の「濃いシチュー」シリーズやハウス食品の「北海道シチュー」シリーズといったロングセラーブランドが市場を支えており、ラインアップについても、クリームシチューとビーフシチューの2メニューのみで長らく展開されてきた。

 しかし近年は北海道産生乳100%使用の発酵バターと、北海道にこだわったデミグラスソースがブレンドされた、クリーミーでコク深いおいしさが特長の「北海道ブラウンシチュー」や、厳選した4種のチーズに鶏がらと香味野菜のブイヨンを合わせたスターシェフ監修の「濃いシチュー4種のチーズ」のように、新たなフレーバーのシチュールウ商品も発売されている。

 今期も新機軸のシチューメニューが各社より登場している。エスビー食品ではオマール海老のだしを贅沢に使用した期間限定商品「濃いシチューオマール海老」を発売。オマール海老をじっくり煮込んだだしとともにトマト、香味野菜などをあわせた、家族で楽しめる贅沢な味わいで年末の食卓を彩る。

エスビー食品「濃いシチュー オマール海老」
エスビー食品「濃いシチュー オマール海老」

 一方、ハウス食品では新ブランドとして、卵黄とチーズのコク深さに、黒胡椒とガーリックの風味がアクセントとなった、カルボナーラ仕立ての濃厚な味わいが特長の「カルボシチュー」を発売。同社はシチューの食べ方として、ご飯にかけて楽しむ「かけシチュー派」が若年層を中心に増えていることに着目。ご飯にかけたくなる味わいに特化したシチューを提案することで、新たな客層をつかみたいとしている。

「カルボシチュー」

ハウス食品「カルボシチュー」
ハウス食品「カルボシチュー」

新メニューの露出を高め、トライアルを獲得

 シチュールウは箱入りの固形タイプが主流だが、パウダーや顆粒タイプは溶かしやすく、調理時間の短縮にもつながる。

 ハウス食品の「シチューミクス」は1966年発売のロングセラー。油脂成分の中にほかの原材料を閉じ込めた「ラクとけ顆粒®」は、湯の中に入れた際にデンプンがスムーズに溶け出してダマになりにくく、なめらかなとろみをつくることができる。

 今期のリニューアルでは1袋入りから2袋の小分けにすることで使い残しの減少を図った。またコミュニケーションではグラタン・ドリア、パスタソースといったシチュー以外のメニュー提案も強化している。

 エスビー食品ではこだわり派向けのシチュールウとして、料理家の栗原はるみさんとの共同開発商品で化学調味料無添加のパウダールウ「栗原はるみのクリームシチュー」「栗原はるみのビーフシチュー」を展開。昨秋に発売した「栗原はるみわたしのカレー」も好調で、シチュールウ商品の動きもよくなっている。同社ではパウダータイプならではの簡便性を生かした栗原さんおすすめのアレンジレシピも紹介し、さらなる拡販に努めている。

 シチューは、青果や精肉といった生鮮品との相性もよいことからクロスMDも仕掛けやすく、買上点数の向上につながる商品として、加工食品売場にとってなくてはならないカテゴリーのひとつだ。

 カレールウに比べて季節性や天候の影響を受けやすいシチュールウだが、新たなメニューも登場しており家族みんなで楽しめる煮込み料理の定番として市場拡大のチャンスはある。とくにパウダーや顆粒タイプはアレンジメニューも挑戦しやすく、提案次第で伸びる余地があるといえる。

 シチューは長年、クリームシチューとビーフシチューの2大メニューのみを展開してきたこともあり、消費者も新ブランドや調味料としてのシチュールウの使用方法についてはそれほど詳しくない。トライアルユーザーを獲得するためにも、エンドや主通路沿いで新商品の露出を高めて商品を紹介し、来店客の気付きとなるプロモーションを仕掛けることで、シチューカテゴリー全体の活性化につなげていきたい。

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