ゴーストレストランの「不」を払拭! きちり「客席のないレストラン」躍進の秘密
コロナが一服した23年にデリバリー業態を出した理由
松藤氏によれば、「客席のないレストラン」事業は、コロナ禍をきっかけに構想がスタートしたという。外出自粛で飲食店の客足が遠のいた際、きちりホールディングスは各飲食店でデリバリーサービスを始めると同時にレストランXを設立した。
「コロナが落ち着き、客足が戻っても、コロナ禍のような緊急的な状況は今後も起こりうると考えている。再び外食市場が冷え込む事態に備えるため、デリバリーやテイクアウトの専門チームがあったほうがよいと考えた」(松藤氏)
コロナが一服した23年にオープンした「客席のないレストラン」は、20~30代の女性を中心に幅広い年齢層に利用される人気店となった。若年層から支持を得たのはねらいどおりだったという。
「働き盛りの20~30代は、人気店のメニューを食べたいというモチベーションを強く持っているものの時間がない方が多く、タイムパフォーマンスを重視している。そこでデリバリーの利点を生かして、店に並ばなくてよい、そもそも行かなくてよいデリバリー専門の人気店をつくろうと考えた」(松藤氏)
「客席のないレストラン」を出店したことできちりホールディングスが受ける恩恵は、外出自粛などの緊急事態に対応できる点だけではない。同店で得た購買情報は、既存外食店の商品開発に活用され、グループ全体の売上増につながるシナジー効果をもたらしていると松藤氏は説明する。たとえば「客席のないレストラン」でハラミ丼の売上がよかったことから、ハンバーグステーキ専門店「いしがまやハンバーグ」でもハラミを使用したメニューを開発・採用し、ヒットしている。
きちりホールディングスは今後、「客席のないレストラン」の新規出店を検討しているほか、既存外食店をフランチャイズ化し店舗拡大を進めていく計画だ。それ以外にも同社が展開する、外食企業向けのアウトソーシングやサポート、コンサルティングを行うプラットフォーム事業の拡大も考えているという。
「少子高齢化社会で厳しい環境だが、企業として成長を諦めるわけにはいかない。既存事業とのシナジーが生まれるような飲食業の“一歩隣”の事業にチャレンジしていきたい」(松藤氏)