たんぱく質摂取の大切さを発信する「 めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」が誕生

室作 幸江
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実は不足している日本人のたんぱく質摂取量

 拡大傾向が続くたんぱく補給食品市場だが、実は日本人のたんぱく質摂取量はそれほど高くない。図表②に示す「日本人の1人1日当たりのたんぱく質摂取量の年次推移」によれば、たんぱく質の摂取量は1950年代と同水準(1日当たり平均70g)に低下している。こダイエットや高齢者の活動量低下に伴う少食化などがある。

図表② 日本人の1人1日当たりのたんぱく質摂取量の年次推移

 たんぱく質摂取不足は低栄養となって、さまざまな健康問題を引き起こす可能性がある。たとえば、子供の体力低下をはじめ、若い女性では貧血などの健康被害や出産における低出生体重児の増加、中高年においては基礎代謝の低下、高齢者では心身の機能が低下するフレイルなど、世代を問わず深刻だ。飽食の時代といわれながら、日本においては低栄養が大きな社会課題となっているのは驚きといえよう。たんぱく補給食品市場が注目されているものの、健康な体づくりのためには、たんぱく質摂取量はまだまだ少ないというわけだ。

大手食品メーカー3社が課題解決のために連携

たんぱく質コンソーシアム「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」の設立記念発表会にて
たんぱく質コンソーシアム「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」の設立記念発表会にて

 こうした課題解決のために立ち上がったのが、たんぱく補給食品を手がける大手食品メーカー3社だ。明治、伊藤ハム米久HD、マルハニチロの3社は、日本人のたんぱく質摂取量低下の改善を目的に、今年6月、コンソーシアムを発足。その名も「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」だ。同コンソーシアムでは、食品業界、地方自治体、職能団体などの垣根を超えて連携しながら、たんぱく質で解決できる課題やたんぱく質の可能性を広く社会に共有し、たんぱく質摂取の啓発活動を推進。人生100年時代といわれるなか、老若男女すべての人が心身ともに健康に暮らせるウェルネス社会の実現をめざす。

ミールキットが同梱された「たべる教科書」
ミールキットが同梱された「たべる教科書」

 「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」の第一弾の取り組みは、食育コンテンツ「たべる教科書」を活用した啓発活動だ。「たべる教科書」は、(公社)日本栄養士会監修のもと、小学校の中・高学年を対象にした“体験学習型の教科書”である。教科書の前半部分には、体のしくみやたんぱく質の重要性、各種栄養素などについての解説が掲載されており、読んで学べる内容で構成されている。後半部分には、簡単な調理をくわえることで「たんぱく質を十分に摂ることができる朝ごはん」へ変えられるミールキットが同梱されており、たんぱく質の大切さについて自ら調理して食べることで理解を深める内容になっている。

 「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」では、この「たべる教科書」を用いて、たんぱく質にまつわる公開授業を行政と連携して行う予定だ。初回は、快適健康都市として健康に関する取り組みを推進している長野県佐久市内の小学校で開催する。座学と調理実習を組み合わせたユニークな授業となりそうだ。

 また、(公社)日本栄養士会と連携し、「たべる教科書」を活用したたんぱく質について学ぶイベントも開催する。同イベントは、47都道府県の中で最も朝食の欠食率が高い沖縄県から実施することが決まっている。たんぱく質がいちばん不足しがちな朝食時にこそ、しっかりとたんぱく質を摂取することの大切さを啓発していく。

 さらに今後は、たんぱく質に関する消費者調査や研究成果の発表などを行うことで、たんぱく質の重要性を発信。「めざせ1日80g!たんぱく摂ろう会」の名称にある1日80g※3のたんぱく質摂取へとつなげていきたい考えだ。

 コロナ禍で健康に対する意識がますます高まるなか、こうしたコンソーシアムの活動は広く受け入れられると推測できる。それに伴い、たんぱく補給食品市場は今後も拡大が加速しそうだ。

※3 個々の身体レベルや体重によって推奨されるたんぱく質の摂取量は異なる

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