重要なのは普段のサービスレベル!「お客さまの声」から浮かびあがる「また行きたくなる店」とは

2022/09/16 05:54
    森本 守人 (サテライトスコープ代表)
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    長引く景気の不透明感、相次ぐ値上げなどを背景に、価格訴求型の業態が注目を集めている。もりとん生活者にとって安さは魅力だが、店は価格だけで選ばれるのではない。従業員との会話、売場の楽しさなど要因はさまざまだ。本稿では、レシートデータや利用者アンケートの収集・分析を手掛けるmitoriz(ミトリズ:東京都/木名瀬博社長)の協力のもと、各チェーンに寄せられたお客の「感謝の声」にフォーカスし、人が何に心を動かされ、「また来店したい」と思うのかについて考えてみたい。

    XiXinXing/iStock

    コロナ禍で寄せられた感謝の声

     mitorizは、全国約100万人の協力モニターからレシートとアンケート回答を収集した購買証明付き購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POB)」を保有し、消費者の購買行動やその背景などを分析している。

     本稿では、2022年8月10~11日、全国のPOB会員を対象に、食品スーパーを中心としたチェーンにおいて、店舗スタッフに「助けられた体験・エピソード」をアンケート回答で集めた。集まった声は「親しみのある対応」「お年寄りへの対応」「心遣い」など、いくつかに分類されている。それらのなかから、目に止まったものを紹介してみたい。

     まず、注目したいのは、「コロナ禍対応」だ。2020年初頭から始まった感染症は、いまだ収束の兆しが見えない状態が続く。その間、人々の価値観は変わり、行動パターン、ライフスタイルにも影響を及ぼしている。

     東京都在住の50代女性は「コロナで外出がままならないときに、唯一スーパーに行く時だけが息抜きになっていた時期がある。その中で、食の楽しさに気づけたのもスーパーのおかげだと思う」という回答が寄せられた。

     店員が特別な接客をしたわけではない。以前とは心境が変化した結果、食品スーパーに行くだけで心が休まり、女性にとり安らげる場所になった。外食を控える風潮のなか、調理する機会も増えている。毎日の食事も新鮮な気持ちで見られるようになったのは、食品スーパーの“おかげ”と表現している点も興味深い。

     同様に、「コロナで殺伐とした世の中だがスーパーに行ったら挨拶や丁寧な対応に嬉しくなる時がある」(佐賀県在住30歳代女性)といった声も多かった。それまでもずっと食品スーパーを利用していたと思われるが、お客にとって以前とは違う場所になってきているようだ。

    重要なのは「普段のサービスレベル」

     次は兵庫県在住の40代女性の声。「コロナ禍でも、レジでキチンと対応して下さり、有難いです。きっと感染の不安もいっぱいあるでしょうが、マスクの下で笑顔を見せて下さり、こちらも、マスクの下で笑顔をお返ししています」。

     店員はレジで商品をスキャンする前、目を見て微笑んだのだろう。お客もそれに応えた。コロナ禍ではマスク生活は日常になっており、相手の表情が読みにくくなっている。しかし精算時は、コロナ禍でも人との距離が縮まる数少ない場面のひとつ。そこで交わされた当人同士しかわからない交流に、心温まる思いがした。お客はきっと気分よく店を後にしたはずだ。

     このほか「親しみのある対応」に心を動かされる人も多い。「顔を覚えて下さっていて、レジに通ると『いつもありがとうございます!』と言ってくれる。すごく笑顔で対応して下さって、いつも、こちらが癒やされています」(静岡県在住の30代女性)

     繰り返しになるが、いずれも店員が何か特別な対応をしたわけではない。その意味では、コロナ禍では、普段のサービスレベルが重要になると言えそうだ。

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