アメリカ小売業ランキングトップ10! 環境激変下での各社の業績&成長戦略とは?

関川 耕平 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)

出店を加速するコストコ クローガーは経営体制の混乱続く

 ホールセラー業態最大手で、昨年5位から4位に浮上したコストコ(Costco Wholesale)は、インフレの追い風を受け、販売額で高い伸び率(同8.9%増)を維持している。同社は24年度にメイン州初出店を含む29の新店をオープンするなど、出店を加速させている。とくにEC事業は好調で、24年度のEC売上高は同16.1%増と力強い伸びを見せた

M&A頓挫、社長交代と混乱続くクローガー(jetcityimage/iStock)

 CEO(最高経営責任者)のロン・ヴァクリス氏は、24年度第4四半期の決算説明会で「コストコ・ロジスティクスは同29%増となる450万点以上の商品を配送した。24年度はECの売上高伸長には大型でかさばる家電と家具の売上が大きく寄与した」という。

 米食品スーパー最大手の5位クローガー(Kroger)は、2年以上協議が続いていたアルバートソンズとのM&Aが24年12月に破談となるなど、混乱が続いている。このM&Aの過程で、連邦取引委員会(FTC)による独禁法審査を通過するため、両社は24年7月、計579店舗をC&Sホールセール・グローサーズ(C&S Wholesale Grocers)へ売却している。

 しかし、FTCの反対によりM&Aは実現せず、両社が店舗網を縮小しただけに終わった。さらに25年3月、クローガーは11年間CEOを務めたロドニー・マクミュレン氏の辞任を発表。現在は、取締役会長のロナルド・サージェント氏が暫定的にCEOを務め、新CEOの選任が進められている。

 また、英オカドグループ(Ocado Group)と提携している自動フルフィルメントセンター(FC)への多額の投資が影響し、EC事業の伸び悩んでいる。プレスリリースによれば、24年度のEC売上高は130億ドルで、総売上高に占める構成比は9%。売上高自体は前年度を上回ったものの、成長率は鈍化している。

ターゲットが新たに開発した大型フォーマット
ターゲットは“食”と“ビューティー”がその成長を支えている

 SM大手で6位のターゲットはファッションや生活雑貨などの売上高構成比が高いため、インフレと重い関税措置による販売額へのダメージが大きい。しかしながら、他社ブランドなどと協業している食品部門とビューティー部門がインフレ下でも着実に伸長しており、業績を支えている。

 また、店舗をフルフィルメントセンター(FC)として活用する「ストア・アズ・ハブズ戦略」や、出店ペースのスローダウンといったコスト抑制策が一定の効果を示している。出店戦略では、24年度からの10年間で300店舗以上の新規開業を計画していたが、24年度は23店、25年度は20店にとどまる見通しだ。

インフレに加え、トランプ大統領による重い関税措置で経営環境が大きく変化する米国小売業界。シビアな環境をチャンスに変えるべく、各社はEC事業などを中心に投資を続け、24年度はその成果が数字に表れてきたと言えるだろう。

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記事執筆者

関川 耕平 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

1995年生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業。

24年に株式会社ダイヤモンド・リテイルメディアに入社し『ダイヤモンド・チェーンストア』の担当編集者となる。

趣味はクライミングとコーヒーを淹れること。特技と悩みは浪費と早食い。

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