EC、ディスカウンターが勇躍! 米国小売業販売額ランキングを発表&分析

解説・文:高島 勝秀(三井物産戦略研究所 産業情報部産業調査室 シニアエコノミスト)
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米国小売市場は成長が鈍化し、インフレ率が小売売上高の伸び率を上回る状況が続いている。関税強化、物価高などによって消費者の景況感が悪化する中、小売各社はECを中心に事業規模を拡大。市場全体のEC化率は29.1%となった。今後も同様の傾向は続き、経営環境は新たなフェーズへと移っていくとみられる。企業・業態ごとの最新動向をランキングとともに読み解き、今後の展望を探る。

上位の顔ぶれ変わらず、年々寡占化進む

 2024年の米国小売(自動車、ガソリンなどの燃料を除く)の市場規模は、対前年比1.7%増の4兆3724億ドル(約634兆円)で、19年から24年までの過去5年間の年平均成長率は6.1%で推移している(図表❶)。ユーロモニターによると、直近5年間の小売売上高の伸びは21年以降に鈍化。22年以降は消費者物価の上昇率(インフレ率)が小売売上高の伸び率を上回る状況が続いている(図表❷)。

図表❶米国小売市場における主要業態別売上高と成長率(抜粋)

図表❷米国小売売上高と消費者物価の伸び率(2020~24年)推移

 今後5年間の米国小売業の売上高は、年平均2.8%の成長が見込まれる。これは直近1年間の成長率を上回る数字ではあるものの、物価高、関税などに起因する消費マインドの冷え込みが懸念されている。

 米国小売市場において、全体の成長ドライバーとなっているのがECである。24年のEC売上高は対前年比7.3%増と堅調に推移し、小売売上高全体に占める割合(EC化率)は29.1%に達した。この比率は29年に35.1%にまで拡大する見込みだ(図表❸)。

図表❸米国小売市場におけるEC化率の推移

 ネットスーパーもコロナ禍初期の急成長を経て、安定成長を続けている。24年のネットスーパーの市場規模は同8.4%増となり、グロサリーのEC化率は23年の10.8%から11.4%へと上昇した。

 24年の販売額ランキング上位10社を見ると、若干の変動はあるものの、21年以降、その顔ぶれは変わっていない。しかし、21年は上位10社の合計販売額が小売市場全体に占める割合(占有率)が40%であったのに対し、24年には43%となっており、上位企業による市場の寡占度が年々高まっているのがわかる。

新人事発表のアマゾン、グロサリーに注力か

 ランキング上位企業の動向を見ていくと、1位ウォルマート(Walmart)の販売額は対前年比5.7%増と、その伸び率は全体平均(同1.7%増)を大きく上回った。ウォルマートは成長の理由に、高所得者層を新規に取り込んだことを挙げている。

販売額ランキング

 また、プライベートブランド(PB)の好調も好業績に寄与している。同社は24年5月、価格と品質のバランスを重視した食品PB「ベターグッズ」を発売した。同ブランドはナショナルブランド(NB)以下の価格で原材料にこだわった商品を提供する。NBと遜色のない品質と、値ごろ感のある価格を担保し幅広い顧客層からの支持を集めている。

 ランキング2位のアマゾン(Amazon.com)の販売額は同0.9%増だった。全世界売上高の約7割を米国で稼ぐ同社。コロナ禍でEC事業が大きく成長したものの、23年はとくに直販EC事業が苦戦した。24年以降は回復に向かっている。

 ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market:以下、ホールフーズ)をはじめとする実店舗小売事業では、

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