コスパのコストコvsタイパのサムズクラブ 米会員制ホールセラーの最新戦略とは

後藤文俊
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一貫したプライベートブランド(PB)戦略と高いコストパフォーマンスで、経済環境の追い風を一身に受けるコストコ(Costco Wholesale)。対して、デジタル施策で実現した高い利便性を武器に若年層からの支持を集めるサムズクラブ(Sam’s Club)。「コスパ」と「タイパ」、異なる価値提案で急成長を遂げている会員制ホールセラー大手2社の戦略を詳述する。

総会員数約1億3000万人!会費上昇でも更新率90%超に

 筆者は買物の効率を考え、週末にコストコに行くことを避けている。なぜなら、混雑で駐車スペースの確保が難しく、レジの待ち時間が長いなど、数アイテム程度の買い物では時間対効果、いわゆるタイパが悪いと感じるからだ。とはいえ、これはコストコの人気の高さを裏付けるものでもある。

 一方、ウォルマート(Walmart)傘下のサムズクラブは、デジタル技術を活用することでタイパを向上させるなど、独自の戦略で競合コストコに追随してきた。両社の取り組みは、ホールセラー業界の現在地を読み解くうえで、非常に興味深いトピックスであるといえる。

 コストコの2025年度第2四半期(2513月)の連結業績は、会員費売上高を除く純売上高が6253000万ドル(対前年同期比9.1%増)だった。24週間(2491日~25216日)累計の純売上高も12352000万ドル(同8.3%増)と高い水準にある。純利益は、食品、ジュエリー、家庭用品などの販売が好調だったことで、同2.5%増の178800万ドルとなった。米国内の既存店売上高は同8.3%増と、好調に推移している。同社は255月時点では米国内に627店舗を展開しており、25年内は新たに12店舗を出店する予定だ。

 この好業績を支えているのが、コストコのPB「カークランドシグネチャー(Kirkland Signature)」である。1995年に導入された同ブランドは24年度、売上高が860億ドルに達し、同社全体の売上高の約3分の1を占めるまでに成長している。

 競合他社は複数のPBを展開しているが、コストコはカークランドシグネチャーを唯一のPBとする独自の戦略「限定SKU環境(Limited SKU Environment)」を採用している。PB1つにすることで、消費者に一貫した品質と価値を持った商品を提供し、ブランド認知度と信頼性を高めるねらいだ。

 なお、同PBで新商品を発売する際は、CEO(最高経営責任者)の承認プロセスを経なければならない。こうした品質管理体制も、製品の信頼性と顧客満足度の維持に寄与しているとえるだろう。

 また、限定SKU環境は「ジップロック」を展開するSCジョンソン(SC Johnson)など、大手ナショナルブランド(NB)企業に対して、価格交渉のためのツールにもなっている。コストコは売場の総SKU数を4000程度に絞り、1つの商品カテゴリーで採用する商品数を23つに限定している。

 そのため、

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