絶好調エービーシー・マートの2023年2月期決算、強さの中身を分析!

棚橋 慶次
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盤石のエービーシー・マートが見据えるのは……

 通期決算と同時に発表した2024年2月期業績予想では、営業収益が対前期比7.4%増/前期から214億円増の3115億円、営業利益が同4.0%増/同16億円増の440億円、当期純利益が同0.5%増/同1億円増の304億円と増収増益計画する。達成すれば売上・利益とも過去最高だ。

 インフレ進行に伴う消費減退や世界的なリセッションが懸念されるものの、国内外ともに経済が正常化しつつあり、訪日観光客の大幅増も期待できる。

 こうした環境を踏まえ、2024年2月期は「Japan LIMITEDの発信」をテーマに各種施策を推進する。具体的には、日本でしか買えないオリジナル商品の充実・強化する。訪日観光客も含め、「ここでしか買えないアイテム」で顧客を引き寄せ、ライバルとの差別化を図ろうというわけだ。

 エービーシー・マートの好業績を支えてきたのは、「VANS(バンズ)」「Hawkins(ホーキンス)」といった人気海外ブランドの存在だ。いずれもエービーシー・マートが商標権を取得しており、企画・製造・販売といったサプライチェーンも同社に委ねられている。これらの商品群は粗利益率も高く、収益への寄与度も高い。

 そのほか、エービーシー・マートでは「NIKE(ナイキ)」をはじめとした有名ブランドとの共同開発アイテムに注力してきた。ライバル店には売っていないだけに、値下げ競争に陥る懸念も少ない。

 結果としてエービーシー・マートの収益性はライバルを圧倒し、小売業でも抜きんでて高い。1ケタ代前半が当たり前の業界にあって、同社の売上高営業利益率は15%近くに達する。

 これだけを見ると、靴販売は「おいしいビジネス」にように見えるが、エービーシー・マートがホーキンスと国内総代理店契約を結んだのは、前身の国際貿易商事時代で30年以上前にさかのぼる。ライバル店たちが「仕入れた靴を販売する」という“ラク”な商売に安住し、オリジナル商品開発には見向きもしなかった中で、エービーシー・マートは着実にノウハウを積み上げていったのである。

 同社が今期推進する「Japan LIMITEDの発信」においては、この路線のさらなる強化をめざす。この実現を具体的に裏付けるのが、「販売」「デジタルコマース」「出店」からなる3つの戦略だ。

 販売戦略では、健康ブームに乗ったアウトドア向け・スポーツ向けのアイテムはもちろん、アウトドアグッズや小物といった靴以外の品揃えも強化する。デジタルコマースでは、リアル店舗とオンラインの相互送客を図る。出店戦略では新規出店だけではなく、既存店舗の複合業態化も含める。

 靴専門店チェーンとして盤石の地位にあるエービーシー・マート。今後の同社の“一人勝ち”が続くのだろうか。次の打ち手に注目だ。

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