「スーパードライ」に「コカ・コーラ」も……値上げの秋が到来!
昨年より断続的に行われてきたナショナルブランド(NB)商品や公共料金の値上げがこの10月にピークを迎えている。2021年の値上げは、主に新型コロナウイルスの世界的な蔓延による経済活動の鈍化と景気回復の遅れ、原油の生産低迷などが重なり、原油価格、原材料、輸送コストなど仕入れ単価が高騰したことが大きな要因であった。
22年の値上げはこれらの状況にエネルギーや穀物などの輸出において重要な位置を占めるロシアおよびウクライナ情勢が加わった。また、米国がインフレ抑制に向けた金融引締め政策を実施したことで、大規模な金融緩和政策を行う日本との金利格差が生じ、異次元の円安が進んでいる。日銀は過去最大規模の為替介入を行ったが、円安による輸入コストの増加は避けられず、商品・サービスへの価格転嫁は一層進んでいる。
消費者物価の上昇と家計への影響
2022年9月20日発表の総務省「消費者物価指数」(全 国 2022年(令和4年)8月分)によると、総合指数は前年同月比3.0%増の上昇で1991年11月以来、30年9カ月ぶりの水準となった。生鮮食品を除く総合指数は前年同月比2.8%の上昇となり、消費増税の影響を除くと91年9月(2.8%)以来、30年11カ月ぶりの上昇率となった。
エネルギー構成品目は前年同月比16.9%増と前月に続き2桁の上昇となっており、電気代は同21.5%増、都市ガス代が同26.4%増などと大幅な上昇を見せた。
食料は同4.7%増の上昇で、生鮮食品は同8.1%増、生鮮食品を除く食料も同4.1%増といずれも高い上昇率となっている。特に食用油が39.3%、鮭が28.0%、食パンが15.0%等、日常的に口にする食料品が大幅に上昇している。
22年9月6日に総務省が発表した家計調査報告(22年7月分)によると、教養娯楽サービスや交通、外食などの増加により消費支出(二人以上の世帯)が1世帯あたり28万5313円で同3.4%増となった。一方、収入は1世帯当たり65万7263円で同4.6%減となっている。
帝国データバンクが食品主要105社を対象とした価格改定動向調査によって明らかになった値上げ率と総務省「家計調査」のデータを基に、食料品の値上げによる家計支出への影響を22年9月22日に発表。推計によると1世帯当たりの負担増加額は1カ月平均で5730円、年間で6万8760円となった。
日本における消費者物価指数の上昇率は欧米の8~9%台と比較すれば低い水準とは言え、現時点での国内の物価上昇は実質賃金の上昇を伴っておらず、家計への影響は非常に大きい。
2022年下半期および10月の価格改定
これまでにない社会経済状況によって、飼料価格、容器価格、包装資材、物流費など企業が負担すべきコストも増加している。そのため、メーカーおよび小売各社では商品価格の直接的な値上げや、内容量などを調整する「実質値上げ」などを断行している。
帝国データバンク(東京都)が行った「食品主要105社」価格改定動向調査(10月)によると、22年の食品の値上げは再値上げの商品を含め9月末までに累計2万665品目あり、22年10月には6699品目と今年最多の値上げが行われる。
10月に値上げされる6000品目以上の驚異的な数は、2番目に値上げの多かった22年8月の2493品目の2倍以上である。各品目の価格改定率は平均で14%と、品目および値上げ率共に値上げのピークとなっている。
22年下半期は飲料では宝酒造が焼酎やハイボールなどを1~8%値上げ、輸入小麦の政府売渡価格が平均で17.3%引き上げられたことに伴い、6月から日清製粉が小麦粉や薄力系小麦粉などを25kg当たり約350円~415円値上げ、同月に日清食品や明星食品などがカップ麺、袋めんを5~12%値上げを行った。
7月には伊藤園がティーバッグ茶・顆粒茶・抹茶を5~12%、サッポロビールも焼酎7商品を1.4~1.9%値上げ、輸入ワインに至っては105商品を1.6~49.8%と大幅に値上げしている。8月にはニチレイや味の素、マルハニチロ、ニッスイなどの冷凍食品各社が5~20%の値上げ、ハウス食品もカレーのルウなどを約10%値上げしている。
9月にはマルハニチロが缶詰を約5~20%、はごろもフーズも3.3~31.6%の値上げを行った。乳製品では雪印メグミルクが同月にチーズなどを3.3~9.1%値上げ、または内容量変更を行った。同月、カルビーはポテトチップスやじゃがりこなど、定番シリーズを10~20%、ロッテはパイの実やチョコパイなどを4~17%と菓子の値上げが相次いだ。