やりがちな「スキル採用」で会社がめちゃくちゃになる理由と正しい採用戦略とは
そのような会社にいた時、私に「倉庫が止まりそうだ。なんとかしてほしい」という依頼がきた。私は、すぐにでも出かけて診断をしようと思ったのだが、その会社のルールで「エリアの上司」「セクターの上司」「テーマの上司」の都合をあわせ状況説明をしなければならなかった。だが、全員の予定を合わせようとすると、はなんと1ヶ月後でないと会議が開けないのだ。
上司が全員揃っていないと、後で「そんな話は聞いていない」となって仕事が円滑に進まなくなる。それだけではない。会議の出席者があまりにも多いものだから、最初の会議では、20人以上の人間がでてきて話すため、一時間では終わらないし、何も決まらないまま時だけが流れる。また、みな分刻みで予定が入っているから、あと15分あれば「ネクストステップ」を決めることができるのに、時間切れとなり、では2回目のミーティングを開こうと思うと、さらに1ヶ月後になってしまう。
こうして、たった2度の状況説明をするだけに2ヶ月を要し、気付いたときにはそのクライアント候補は「動きがおそくて待ってられない」と言い残し、仕事は破談になってしまった。日本の巨大企業「あるある」だ。
実は組織というのは小さければ小さいほど良い。「Small is beautiful」である。さらに、このようなマトリクス組織では責任の所在が不明瞭になり、問題が起きた場合「戦犯」が見えにくくなる。だから、そういう巨大企業は、クライアントも巨大企業。スピードが昔から同期化されているのでずっと同じ仕事が毎年おちてくる。
「100日プラン」を新規採用者に作らせる
先に話したように、人材を強化して競争優位性を高めようと考えている企業は、「誰を採用するか」でなく、「採用した人材は、どうすれば自然に組織に馴染むのか」を考え、設計すべきだ。例えば、最初の3ヶ月は「100日プラン」といって、「馴染み」の期間をサンクコスト(避けられないコスト増要因)と考え、あえて仕事らしい仕事を与えず、組織の文化、やり方を馴染ませる。「100日プラン」は、採用された本人に書かせるのがよい。MBO (企業の評価精度で、自分自身で目標を設定させる方法)と同じ考えだ。私が知っているある流通企業は、店頭でのマニュアルを入社した新人全員に自分で書かせ、会社からトップダウンで「これをやれ」という具合に強いることはしない。
また、できればトップが頻繁に会って、採用した人材がみたり感じたりしている「違和感」を聞く姿勢も大事だ。トップは忙しいのだ、と文句を言う人もいるが、トップが耳を傾ければ文句はでなくなる。ある世界企業ではトップの仕事の65%は人事、労務と規定している。強い企業=強い人材なのだ。また、採用される方も、絶対に「昔話」をしないことだ。こうして、お互いに結婚前の同棲期間をあえてつくることで、お互いの距離を縮めてゆくわけだ。
河合拓のアパレル改造論2023 の新着記事
-
2024/11/07
同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ -
2023/12/26
「低価格×デザイン」だけではない しまむら好調、もう1つの理由とは -
2023/12/19
衝撃!SPA業態そのものには優位性がない、本質的な理由とは -
2023/12/12
日本のアパレルは勝てない!Z世代起点にするDholiCのビジネスモデルを解明! -
2023/12/05
半分以上のビジネスパーソンが勘違い!キャッシュフローと運転資本を正しく理解する方法 -
2023/11/28
仕事激変で商社の競合はコンサルに!人生を自分で切り開くための方法とは
この連載の一覧はこちら [49記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2024-02-21ファストリ業績絶好調も…日本の大衆から乖離するユニクロはどこへ行く?
- 2024-09-27ユニクロが中間価格帯になったことに気づかない茹でガエル産業アパレルの悲劇_過去反響シリーズ
- 2021-11-16「ラルフローレン」と「ユニクロ」が同じである理由とZ世代に対する誤解が生む悲劇
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販