GMS衣料のジレンマと真実!イトーヨーカ堂アパレル完全撤退の必然とは
西友から生まれた「無印良品」だけが成功した理由
『ブランドで競争する技術』では、「西友」のプライベートブランドであった「無印良品」が、なぜ今や世界ブランドになったのかを、あらゆる関係者のインタビューを元に作成・分析し結論を導き出した。
それが「出島理論」である。GMS本体から切り離し、無印良品は出店、採用、システムなどを独自に開発したことと、ハッキリとした世界観をもっていたことが理由で、世界企業にまで上り詰めたのである。「いわゆるスーパーのブランド」が格好良くなったもの、というコンセプトが受け入れられたのである。その後、私は大手総合商社、大手ファッションビルで「出島理論」を使い企業再建に成功していた。
その時われわれは、あらゆる調査を行い、「必需品と必欲品は同時に売れない」という結論を導き出した。
そもそもGMS (General merchandized store: 日本では「総合スーパー」と訳されて具体的には、日常で必要とされる商品を、幅広く取り扱っている大規模な小売店をいう)自体を変えずに、SPA(アパレル専門店)を習っているとは滑稽以外のなにものでもない。このあたりは、「良品計画」が世界企業になった理由を失敗事例も含め非常に詳しく書いているので、ぜひ「ブランドで競争する技術」を読んでいただきたい。
話を、冒頭の会議に戻す。実は、私が発言したことはクライアント以外の誰もが感じていたことだった。しかし、この一言はなんと10年以上、誰も口にせず放置されていたし、そもそもGMSに入社する人は、私のような、いわゆる「アパレルバカ」ではない。だから、必需品も必欲品も同じように考えるのだ。
しかし、必需品は「商圏内の胃袋の大きさ x 胃袋の数 – 競合に奪われる客数」という公式から安定した数字を計算で算出することが可能だ。したがって、フードロスのような指標もあるにはあるが、アパレルのように残品率(KPIの一つで、総仕入で売価変更をしても売れ残る売上比率)30%で、20%も破棄損が残るなどということはない。
また、例えば魚のように、売れ残って新鮮さが落ちてきたら、刺身や焼き魚に加工して売り切るということもアパレルではしない。アパレルのような必欲品は、リスク回避は受注生産しかないのだ。なぜなら、商品が持つアトリビューション(その商品の価値を決定つける要因)が、デザインにあるのか色にあるのか、価格にあるのか、機能にあるのか、さらに細かく分析してみなければ分からないからだ。単純な必需品と違い、戦略変数が圧倒的に多いのである。
河合拓のアパレル改造論2023 の新着記事
-
2023/12/26
「低価格×デザイン」だけではない しまむら好調、もう1つの理由とは -
2023/12/19
衝撃!SPA業態そのものには優位性がない、本質的な理由とは -
2023/12/12
日本のアパレルは勝てない!Z世代起点にするDholiCのビジネスモデルを解明! -
2023/12/05
半分以上のビジネスパーソンが勘違い!キャッシュフローと運転資本を正しく理解する方法 -
2023/11/28
仕事激変で商社の競合はコンサルに!人生を自分で切り開くための方法とは -
2023/11/21
やりがちな「スキル採用」で会社がめちゃくちゃになる理由と正しい採用戦略とは
この連載の一覧はこちら [48記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-08-20売上100億円の超高収益アパレルが増殖の理由とユニクロとの共通点
- 2024-08-27好調アパレルに異変?在庫回転率悪化の複数要因とファストリ改善の理由
- 2024-08-14ムダ多く割高!日本のアパレル生産が「ガラパゴスの壁」を越える方法
- 2024-01-09ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは
- 2023-09-19ユニクロ柳井正会長が「世界は可能性に満ちている」と語る真意
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2023-11-28仕事激変で商社の競合はコンサルに!人生を自分で切り開くための方法とは
- 2024-07-12値下げ率大きいユニクロと値下げ率小さいしまむら どちらが高収益?
関連記事ランキング
- 2024-08-20売上100億円の超高収益アパレルが増殖の理由とユニクロとの共通点
- 2024-08-27好調アパレルに異変?在庫回転率悪化の複数要因とファストリ改善の理由
- 2024-08-13地球沸騰で「アウター依存」アパレルは危険!勝ち残る斬新な戦略とは
- 2024-08-06消費者自ら参加し運営する「生協」 株式会社にはない価値と弱点とは
- 2024-08-21アパレル業界再編のトリガーは?A.T.カーニー福田稔氏が見通す
- 2024-07-23ユニクロに通じる…ファミマが検討中の衣料専門店が「台風の目」になる理由
- 2024-08-14ムダ多く割高!日本のアパレル生産が「ガラパゴスの壁」を越える方法
- 2024-07-30スポーツアパレル市場が今後も成長する理由とユニクロの役割とは
- 2024-01-09ユニクロに負けずに利益を上げる!アパレル2024年「5つの論点」解決策とは
- 2024-06-11日本人の服がこの10年で「ペラペラ」になった本当の理由