“儲からない”我慢大会どこまで続く?5年後の商社のアパレルビジネスと業界への影響を大予測!
総合商社は1社除いてアパレル撤退!?
5年後の不都合な世界
アパレル市場規模が15兆円もあった時代、そのころ伊藤忠商事の繊維の売上は8000億円もあった。アパレル市場規模がいまや半分になり、200%という世界でも類を見ない過剰供給と、ゴミの排出を続けているアパレル業界は、昔相場で儲けた貯金を切り崩しながら、徹底したリストラと薄口銭により、値引きの我慢大会になっている。
「売上減少も底をついたな。」
現役の商社マンの友人がこういった。これは、政府がコロナ対応の解除を行い、リベンジ消費と円安によるインバウンド消費による一時的なもので、底などそもそも存在しない、あえていうなら、すべてが外資系になれば商社の売上などゼロになる。これが底だ。
それなのに、いまだに経済のアップダウンが「他力」だと勘違いをしているのだ。当たり前だが、良い商品を作れば、衣料品の消費は他の消費財やサービスから需要を奪い、まことしやかにいわれる「市場規模7.5兆円」も軽く超えるだろう。それを、「需要がまたきた」、「また、去った」と台風が来るかの如く語るところが、この30年なんの進歩もない証左だ。
そして、5年後、この我慢大会も結論がでるだろう。
まず、伊藤忠商事を除き他の大手商社は繊維事業部から撤退し、他のポートフォリオに組み替えるだろう。また、伊藤忠商事もOEMはスポーツ衣料のみに注力し、「新規にビジネスをはじめるのであれば資本(エクイティ)注入が条件だ」といってくるだろう。
こうして、時代は専門商社の時代となるわけだが、専門商社とて「我慢大会」から抜け出せないほどこり固まっているだろうが、その背景にある事情は総合商社と同じである。
一つ、そして、大きな違いは、総合商社は繊維などやめても次があるわけだが、専門商社は繊維がなくなれば会社がなくなってしまう。したがって、必死にOEMにすがりつき、身を粉にし利益を圧迫しながらリストラとOEMを繰り返すことになる。
実は、この煽りを受けるのはアパレル、あるいは、SPAアパレルなのだ。私は過去に、QR(クイックレスポンス)の効果測定をし、作り増しをいくらしても消化率は下がる一方であるというデータに衝撃を受けたことがある。それでも、「我が社はQRでアパレルを助けます!」というあやまった戦略とスローガンで日本の工場は、売れないアパレル企業の息の根を止めるのを長引かせた。
その結果、計画生産を行う海外のアパレル工場、あるいはごく少ない日本の工場だけが生き残り、QRに付き合った工場が廃業に追い込まれている。QRが成立するのは、ユニクロのヒートテックのように販売期間が長くベーシックで、残っても来年売れる商品だ。
極論をいえば期初計画で2年分ぐらいの在庫をもってもよいのだが、それは交差比率(粗利 x 回転率:企業に入るお金を最大化させるKPI)を増やすためだ。逆に、二年と言わず一年の在庫をもつだけで即死するアパレルはQRによる作り増しなど、もはやお付き合いしてくれる工場さえない。あるとすれば、商社が資本を入れている日本仕様の工場で、そういうところをお付き合いをしているアパレルは運が良いとしかいいようがない。いまコスト競争力をもたせようとすれば、発注から納品までのリードタイムは半年から一年ぐらいかかることになり、もはや私が過去に予言したように物理的にQRなどできなくなっているのだ(シーズン中に増産依頼しても間に合わないどころか季節が変わるか翌年になってしまうのだから当たり前だ)。
今、アパレル各社は未曾有の好景気に浮かれているようだが、この好景気が一時的なもので、第二波(中国との人材交流障壁が完全撤廃されたときに押し寄せる中国人、インバウンド)を期待し、「底をついた」などといっているようでは、臭いものに蓋をしているだけなのである。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
河合拓のアパレル改造論2023 の新着記事
-
2024/11/07
同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ -
2023/12/26
「低価格×デザイン」だけではない しまむら好調、もう1つの理由とは -
2023/12/19
衝撃!SPA業態そのものには優位性がない、本質的な理由とは -
2023/12/12
日本のアパレルは勝てない!Z世代起点にするDholiCのビジネスモデルを解明! -
2023/12/05
半分以上のビジネスパーソンが勘違い!キャッシュフローと運転資本を正しく理解する方法 -
2023/11/28
仕事激変で商社の競合はコンサルに!人生を自分で切り開くための方法とは
この連載の一覧はこちら [49記事]
関連記事ランキング
- 2024-10-29ライザップ傘下の夢展望、Temu効果で株価高騰も拭えない「不安」とは
- 2024-11-05ユニクロがZOZOに出店しない当然の理由と今後のECモールとの付き合い方
- 2024-11-12アパレルは「個人売買」「古着」が、今後驚くほど拡大する理由
- 2024-11-19ユニクロ、開始から7年で明らかになった有明プロジェクトのいまとすごい成果
- 2024-11-13値上げしたのにアパレル業界が利益に結び付かない2つの理由
- 2024-10-22事業再生、「自ら課題解決する」現場に変えるための“生々しい”ノウハウとは
- 2024-11-07同じ低価格なのに…GUがしまむらやワークマンと「競合」しない決定的な理由_過去反響シリーズ
- 2024-09-17ゴールドウイン、脱ザ・ノース・フェイス依存めざす理由と新戦略の評価
- 2021-11-23ついに最終章!ユニクロのプレミアムブランド「+J」とは結局何だったのか?
- 2023-08-08EC時代にスクロールとベルーナだけ好調 生き残るカタログ通販、死ぬカタログ通販