“売らない店”b8ta 3号店・渋谷で水回り設備を整えた驚きの理由とは

聞き手:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
構成:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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渋谷に3号店をオープン、試飲・試食の場を提供

──11月15日には東京都渋谷区に国内3店「b8ta Tokyo - Shibuya」(以下、渋谷店)をオープンします。既存の2店舗と異なり、試飲・試食の機会も提供しています。

北川 渋谷店は、宮益坂と明治通りの交差点沿いという絶好の立地での開業ということもあり、多くの企業から出品の引き合いをいただいています。

 試飲・試食の提供については、以前から出品企業より希望する声が多数あがっていたのですが、既存の2店舗には水回りの設備がなく対応できていませんでした。そこで3号店は試飲・試食を含めて五感に訴える体験ストアを志向しました。これは本国・米国のb8taにはない独自の取り組みです。

 コロナ禍では身近な「食」にお金を使う人が増え、代替肉のように新しいカテゴリーの商品が広がっています。3号店ではすでに出品予定の37ブランドが決定し、うち約3分の1が食品カテゴリーとなっています。

──渋谷店は、若い世代との接点を提供できる店とも言えそうです。

北川 そうですね。20代前半から30代後半の「ミレニアル世代」の獲得に頭を悩ませている企業は多く、渋谷店はこの世代へアプローチができる店としても期待されています。

 現在は情報過多の時代で、消費者からの認知を得る入口は1つではなく点在しており、購買に至るプロセスをすべて可視化・分析し、効果的に訴求するのが難しくなっています。

 そうしたなかb8taへの出品を1つの起点としてもらえれば、店頭での接点からb8taテスターによる商品説明、そして購入までの行動をデータで提供し、その後の販促に活かしていただけます。何より実際に消費者に商品を体験してもらうことは、ミレニアル世代だけでなく、すべての世代に購入を促せるインパクトがあると考えています。

──21年4月には福岡市内の3拠点でポップアップストアを開店しました。

北川 初の試みでしたが、出品企業からは好評でした。とくに福岡から離れた場所に本社のある企業にとって、イベント出店は負担が大きく、当社のようなプラットフォームを活用する利点を感じていただけたようです。

 b8taの興味深い利用傾向もわかりました。今回のポップアップストアは実験的に、百貨店「博多阪急」、商業施設「MARKIS 福岡ももち」、「イムズ」(※21年8月閉館)と、客層が異なる3つの施設にオープンしました。とくに百貨店は婦人服フロアに開設したこともあり、来店者は女性比率が高くなると想定していたのですが、結果は年代こそ異なったもの、男女比率は約55%:45%と3拠点とも大きく変わりませんでした。

博多阪急内でのb8ta出店時の様子
21年4月には福岡市内の3拠点でポップアップストアをオープンした。写真は博多阪急内での出店時の様子

──本国・米国では利用者は男性の比率が高いイメージです。こうした利用者の違いの背景で、日本ではb8taの店づくりをローカライズしています。

北川 おっしゃるとおり、米国では男性客が中心です。そうしたなか日本では幅広い層に来店いただけるように、日本流の店づくりを取り入れました。米国ではガジェット商品が中心ですが、日本では全体の3割ほどに抑えて、そのぶんコスメや生活必需品、家電などを充実させました。そして渋谷店からは食品の販売にも注力していきます。

 また店舗スタッフも米国では1店当たり2~3人ですが、その倍以上の人員を配置し、コミュニケーションを通じてより深く商品の魅力を体感してもらえるようにしています。

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聞き手

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

構成

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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