日本一の高質リージョナルGMSをめざす=イズミ 山西 泰明 社長
──三世代が楽しめる店づくりというのは具体的にはどんなことですか。
山西 たとえば、小学校入学を前にランドセルを買い求めに来られた家族連れをイメージするとわかりやすいでしょう。私もそうですが、孫のために購入代金を提供するだけでなく、一緒に店へ行き、息子夫婦、そして孫のうれしそうな表情を見ると幸せな気持ちになるものです。そうした楽しさを体験し、共有していただきたいのです。モノだけでなくコトの提供もめざすのが当社の店づくりです。
当初は、既存店の改装を通じてこうした店づくりに取り組んできましたが、新規出店でチャレンジしたのが15年6月に開業した「ゆめタウン廿日市」です。オープン後、お客さまからの反響は大きく、売上高、来店客数は今も伸長しています。
大手広告代理店が定期的に実施するアンケート調査によると、当社の店に対し「親しみやすい」「買物がしやすい」というイメージを持つ消費者が多いという結果が出ています。ほかのSC(ショッピングセンター)と比較してこの傾向は顕著に表れています。今後もお客さまの期待に応えられるように努力を続けたいと思います。
新型SC「レクト」を開業、年間2000のイベント企画
──今年4月、従来とは異なるスタイルのSC「レクト」(広島県広島市)をオープンしました。
山西 これまで当社のSCには「ゆめタウン」を冠してきましたが、まったく新しいSCを志向しようと、レクトという新ブランドで出しました。レクトはSCのメーンテーマである「Living(住)」、「Eating(食)」、「Culture(知)」と、「Town・Time(街・時)」の頭文字を組み合わせており、選ぶ楽しさを表す「SELECT」にもかけています。「第3の居場所(サードプレイス)」をコンセプトとし、新たなライフスタイルを積極的に提案することで、「毎日、行きたくなる。わざわざ行きたくなる」SCをめざしています。
メーンテーマのうち、「知」はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都/増田宗昭社長、以下、CCC)の書店「広島T-SITE」、「食」はイズミの食品スーパー「youme食品館」、そして「住」はカインズ(埼玉県/土屋裕雅社長)の「カインズ広島LECT店」が担当しています。これら3つのキーテナントを中心に合計150の専門店を誘致しました。
ドミナント出店を進めていくと、どうしてもカニバリゼーション(共食い)が起きます。レクトを出すにあたって、まず考えたのは自社競合しない店です。新たな顧客層の獲得も大きな目標にしました。新しいスタイルのSCを出すことにより、これまで利用されてこなかったお客さまに来ていただこうと考えたのです。
──どのようにライフスタイルを提案していますか。
山西 レクトで力を入れるものの1つにイベントがあり、年間約2000もの企画を予定しています。たとえばCCCさんの「広島T-SITE」の店内はキッチンを備えており、そこで料理教室や「食」に関する催し物を開いています。それをきっかけに当社の「youme食品館」に足を運んでいただければと期待しています。またカインズさんでも、住まいに関するさまざまな催し物を行っています。各種のイベントを通じて、日常の生活に楽しさ、新たな発見を感じてもらえればと考えています。
──開業後、来店客の反応はいかがですか。
山西 連日多くのお客さまに来店していただいています。体験を通じた新たなライフスタイル提案は、リアル店舗が得意とするところですし、今後もこの取り組みを継続するとともに、実際の商品の購入へとつなげていく技術を磨いていきたいと考えています。