デジタル、欧米、サステナブル ファーストリテイリングの成長戦略とは?
コロナ禍でも示した頑健性
全世界を混乱の渦に陥れた新型コロナウイルスの感染拡大だが、世界的に見れば東アジアにおける影響は相対的に少ない。実際、人口100万人当たりの感染者数は日本、中国、韓国ともに、欧米主要諸国と比べるとケタ1つ少ないレベルである。経済打撃も欧米に比べると深刻度は低く、とくに中国では2020年も実質GDP成長率がプラスとなった。
その東アジアを主戦場とするファーストリテイリングは、コロナ禍でも安定した業績を示し、あらためて強さを世界に見せつけた。同社の売上8割超を占めるユニクロ事業は、アジアでの売上高比率が20年8月期で88.9%と、ビジネスの主戦場はアジアである。一方、ファーストリテイリングの競合となる欧州の巨人、「ZARA」を擁するインディテックス(Inditex)やH&Mグループの売上比率は、ともに欧米で8割を超えており、地理的なポートフォリオは対照的である。
その結果、決算時期の違いにより単純比較はできないが、ファーストリテイリングの20年度の売上収益(国際会計基準適用)は対前年度比88%と、インディテックス(同7 2 %)やH&Mグループ(同80%)と比べコロナ禍の影響は相対的に小さい。また、21年度第2四半期時点の通期の連結業績予想は、同110%と業績回復を見込んでいる(図表❶)。
こうしたパフォーマンスは株式市場にも認められ、これまでアパレル業界の首位だったインディテックスの時価総額を、21年2月に初めて追い抜いた。このようにコロナ禍で強さが際立つ企業の代表格ともいえる同社は、いかにしてビジネスの頑健性を築くに至ったのか。
サステナビリティの追求に注力
コロナ禍では、消費者のサステナビリティ(持続可能性)への関心の向上やデジタルチャネルへのシフトといった行動変容が起きた。実際、これらは定量的なデータで裏付けされている。ローランド・ベルガーが4000名超を対象に行った消費者調査では、アパレル商品を購入する際にコロナ以後重視され始めたこととして「地球環境」「製造工程の透明性」「フェアで倫理的」といったサステナビリティ関連の要素や、「EC サイトやアプリの使いやすさ」といったECでの利便性が重視され始めていることが明らかとなった(図表❷)。