ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営20 データが語る!衣食住から食住衣へ転換すべき理由
コロナが人口減を助長 消費は人口構造に裏付けされる
食が伸び、衣料品が低下する。これは我が国に限ったことではなく、国民の高齢化と経済の成熟化によって起こる必然である。今の日本の消費は、経済成長によって形成された中産階級による衣料品などの消費財に変わり、高齢化による食ニーズにシフトしている。
高齢化が進む日本では、この傾向は、ますます顕著になると予想する。図表6は国立人口問題研究所が発表した2030年の人口ピラミッドだが、コロナ禍によって妊娠届が減少、年間出生数の80万人割れが指摘される今、この予測より一層若年層は減少する。コロナ禍は人口問題にまで影響を及ぼしたのである。
「衣食住」から「食住衣」へ
今後、人口の減少と高齢化、所得の低下と中産階級の縮小等によって衣料品への意識はますます低下し、食及び住関連への意識が高まることは想像に難しくない。
最近の若年層は洋服での自己表現よりSNSを通した自己実現に価値を見出すことも知られており、この傾向に一層拍車をかける。そして、スティーブ・ジョブス、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・べゾスのような著名経営者たちも同じ洋服を着続けたり、非常にシンプルな装いだったり、洋服に多くの価値を求めていない。
このような状況変化、環境変化、意識変化を考えるとこれまで言われてきた「衣食住」ではなく、今や「食住衣」と考える必要がある。
しかし、いまだ百貨店では衣料品の構成比が高く、ショッピングセンターでは家賃負担力のあるアパレルへの賃貸を優先した上で収支計画を策定している。
だが、残念ながらこれからはそうはいかないだろう。従来売れていたものを再び売るのではなく、社会から要請されるものに売るものを変えることが重要だ。一日も早くマインドセットを変えて新たなビジネスを構築することが今、求められているのではないだろうか。川の流れを逆流させることはできない。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。
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