小売発想の編集力に磨きをかけ「ライフデザインデベロッパー」に=イオンモール 吉田昭夫 社長
イオンモール(千葉県)の業績が好調だ。2011年2月期以降、経常最高益を更新し続けている。140カ所(14年度末)のショッピングセンター(SC)を運営し、日本のSC市場を牽引するイオンモール。国内SC市場が成熟化するなか、イオングループのデベロッパー事業の中核企業として、どのような成長戦略を描くのか。15年2月に同社の代表取締役社長に就任した吉田昭夫氏に聞いた。
SC成熟期に必要な差別化
──国内SC市場の現状をどのように見ていますか。
吉田 14年度は、国内で7SCを新規開業し、計140SCとなりました。少子高齢化・人口減少で国内消費市場が大きく成長しないなかで、SC市場は成長期から成熟期に入ってきています。2000年代はじめ頃はSCという業態自体に「鮮度」があり、お客さまにとっては非常に新鮮でした。しかし、イオンモールだけでなく多くのSCが開設された結果、お客さまにとっては新鮮味が薄れ、同時にSCの同質化が進みました。その結果、同質化したSCが競合し、1SC当たりの商圏は小さくなり、売上を取り合うことになりました。
こうした状況を見ると、SCの次の成長のステップとしては、個々のSCの差別化戦略が重要になります。そこでわれわれは、新設するSCのコンセプトをはっきりさせて、その特色を打ち出すことに力を入れ始めました。13年3月に開業した「イオンモールつくば」がコンセプトを明確にした最初のSCです。
14年12月に開業した「イオンモール岡山」は、ハード面を含めて、今までのイオンモールとは異なるSCに仕上がったと自負しています。「haremachi(わたしのみらいをつくるまち)」をコンセプトにした駅前立地のイオンモール岡山は、地元テレビ局のスタジオを誘致したほか、地元文化の情報発信をする特区をつくったり、デジタルサイネージを多用したりするなど、さまざまな取り組みにチャレンジしています。
15年春に沖縄県に出店する「イオンモール沖縄ライカム」は、「リゾート」をキーワードにした特色のあるSCです。沖縄県の伝統的な赤瓦を使用するなど外観も特徴的で、国際色の強いテナントを誘致するほか、コンセプトに合った各種イベントを実施する計画です。また、15年秋に愛知県の中部国際空港・セントレア近くに開業予定の「イオンモール常滑」は、拡大するインバウンド消費を取り込むという目的をもったモールです。こうしたSCごとの特徴については、コンセプトを練り上げる企画、テナントリーシング、運営を担当する営業の各部門と役員が参加する合同会議で検討を重ねています。
新規SCで成功した試みは、既存SCに生かすことができます。新規SCは、われわれがめざす姿をゼロから描けるため、新しいチャレンジを実験する場としては最適です。ですから、新規SCの開業は既存SC活性化のための投資の1つという考え方もできます。
──既存SCの活性化については、どのように取り組んでいますか。
吉田 SC数の少ない時代は新規SCを開設することで成長できましたが、SC数が増えて全社の売上規模が大きくなると、新規SCの成長への貢献度は相対的に低くなっていきます。
また、いくらSCを新設しても既存SCの売上を維持できなければ、収益の伸びは確保できません。現在の消費環境では、何も手を打たなければ売上は減少してしまいます。ですから、既存SCの活性化による収益改善が新規SC開設以上にわれわれの成長戦略の大きな柱となり、事業の大きなウエートを占めることになります。
既存SCでは、お客さまの足が遠のくのを防ぎつつ、来店されたことのないお客さまに来店していただけるようにしなければなりません。そのために、「飲食店を増やして欲しい」といったお客さまの要望を反映したり、競合SCにあってわれわれのSCにないテナントを誘致するといった対応が必要になってきます。
SC活性化ではたとえば、増床した部分に新しいテナントを誘致するだけではなく、増床していない部分も含めてSC全体を編集し直すことが大きなポイントです。実際、岐阜県の「イオンモール各務原」はそうした改装によって売上が飛躍的に伸びています。また、愛知県名古屋市の「イオンモール大高」は、増床をせずに専門店の大幅な入れ替えを実施し、売上を2ケタ伸ばすことができました。
15年は、当社のフラグシップSCの1つである、埼玉県越谷市の「イオンレイクタウン」を大幅に刷新します。春と秋の2段階でSCの約半分、400区画以上をリニューアルしますから、お客さまにはまったく新しいSCに来たような印象を持っていただけるでしょう。
14年度は、既存8SCをリニューアルしました。15年度は12SCをリニューアルする計画です。